内部統制における「月次決算」の意義

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決算・財務報告プロセスに係る内部統制

 財務報告に係る内部統制(J-SOX)は、内部統制の4つの目的のうち、「財務報告の信頼性」の確保を目的とするものです。

 四半期決算や年次決算などの「決算・財務報告プロセス」における誤謬(エラー)や不正は、「財務報告の信頼性」に直接影響を及ぼします。

 そのため、内部統制の整備・運用により、当該プロセスにおけるリスクを低減しなければなりません。

 内部統制に対してそのような要請があるなか、「月次決算」は内部統制にとってどのような意味を持つのでしょうか?

 この記事では、「月次決算」について、簡単にまとめました。

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月次決算の役割

 年次決算は、金融商品取引法のほか会社法や税法の規定により行われ、四半期決算においても、金融商品取引法によって定められています。

 しかし、月次決算については法的な根拠がありません。

 では、なぜ企業は月次決算を行うのでしょうか?

月次決算は経営管理のために行われる

 月次決算で取りまとめられた財務情報は、通常、経営会議や取締役会等で経営陣に報告されますが、主に以下のような経営管理上の役割を果たします。

  • 月次単位で業績や財務状況を把握することで、早期に問題を発見することができる
  • 予算統制において、経営計画や年次予算との乖離原因を分析・把握することで、対策を講じたり、計画の妥当性を検証する
  • 前月や前年との業績等と比較し、事業環境の変化を速やかに把握する
  • 部門別や地域別、商品別等に区別して月次決算を行い、より詳細かつ具体的な経営戦略を策定・実行する
  • 毎月会計情報を精査することで、早期に会計処理の誤り等を発見することができ、四半期決算や年次決算の準備に繋がる
  • 減価償却費や税金費用、引当金等を概算により月割計上することで、早期に会計年度の最終利益を予測することができる

 このように、現状をタイムリーに把握することにより、対策の必要性の是非、またどのような対策が必要かという判断指標を入手し、早期に行動に移すことが可能になります。

月次決算と内部統制の関係

 月次決算は、前述のように経営管理を目的としておりますが、内部統制においても以下のように関連しています。

  • 基本的要素「統制環境」…経営者の意思の表れである経営計画の達成度を月次決算により明らかにし、事業部にフィードバックすることで、従業員の経営計画への意識を定着させる
  • 基本的要素「リスクの評価と対応」…経営陣が適時に会社の状況を把握することで、リスクを察知し、対応策を検討する
  • 基本的要素「情報と伝達」…財務情報が経営会議や取締役会で適時に伝達されることによって、経営陣がその職務を果たすことができるようになる
  • 内部統制の目的「報告の信頼性」…月次で会計処理の誤り等を確認・修正することで、四半期決算や年次決算の業務集中を緩和し、また、四半期決算や年次決算に必要な処理について前もって把握し、誤りの発生を予防する

 このように、月次決算が高い水準で実施できる体制にあるということは、内部統制が整備されている、と見ることもできます。

月次決算の主な手順

 前述のように、経営管理に活用するためには、よりタイムリーに財務情報を把握しなければなりません。

 上場企業では、取引所規則により、第1・第3四半期において四半期決算短信の開示を求められ、その開示が第1・第3四半期末から45日を経過する場合はその状況についても開示しなければなりません。

 また、金融商品取引法により、第2四半期末から45日以内に、半期報告書の提出が求められます。

 これらの事情により、毎月15日頃までには、取締役会を開催して開示情報について報告することになります。

 そのため、毎月の業績報告においても、取締役会までに準備することを考慮して、毎月10日頃までには月次決算業務を終わらせておく必要があります。

 そして、月次決算を迅速に完了させるには、計画的に作業を行うことが重要です。

 ただし、月次決算において実際に何をするかは、法令や基準等などで明確に定義されているわけではなく、企業ごとに効率的な手順を構築していく必要があります。

 早期に会計情報を掴み、経営管理に役立てることを考慮して、以下の月次決算の手続の一例を挙げます。

<事前準備>

  • 作業スケジュールの策定
  • 作業の標準化、およびマニュアルやチェックリスト等の文書化
  • 作業分担の決定
  • 関係者へのスケジュールの周知 等

<月次決算処理>

  • 売上や売上原価等の計上(早期化のため25日締にしている企業もあります)
  • 経過勘定の計上、年払い経費の月割計上、引当金や減価償却費等の概算計上(年次決算と同水準の精度が求められますが、作業早期化のため、妥当な概算数値で経費計上することもあります)
  • 仮勘定の内容確認
  • 各種財務資料(月次貸借対照表、月次損益計算書、月次製造原価計算書、月次CF計算書等)の作成

<財務分析>

各種分析資料(予算実績差異分析表、前月・前年実績比較表、月次推移表、部門別損益計算書等)の作成

<業績報告>

上記分析資料をもとに、業績等を経営陣に報告する

<予算修正>

予算と実績の乖離が大きい場合は、年間経営計画の見直しを検討する

上場準備企業における月次決算の重要性

 上場準備企業において、月次決算が正確かつ迅速に行われることは、重要な意味を持ちます。

 上場審査では、企業が安定的に利益を計上できること、または利益推移が成長的であることがポイントのひとつとなります。

 上場準備企業が中長期の経営計画を策定した場合、月次決算で財務状況を適時に把握し、経営計画が順調に達成できているかを継続して確認していくことになります。

 また、もし月次での実績数値が経営計画と乖離していた場合、実績との差異要因を分析して経営計画の修正に活かし、経営計画の精度を高めていく必要があります。

 これらの理由により、上場準備において月次決算が適時・適切に実施できる体制が求められます。

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