全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセス

決算・財務報告プロセスに係る内部統制
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 決算・財務報告プロセスとは、主に経理部門等が行う決算整理仕訳や、財務諸表や有価証券報告書等の外部公表資料の作成など、決算時特有の業務プロセスのことです。

 内部統制の有効性の評価という点において、決算・財務報告プロセスは以下の2つに大別されます。

  • 全社的な観点での評価が適切と考えられる業務プロセス
  • それ以外の個別に評価すべき業務プロセス

 この記事では、前者の「全社的な観点での評価が適切と考えられる業務プロセス」(以下「全社的観点で評価する決算・財務報告プロセス」という)に係る内部統制について簡単にまとめました。

※実施基準=「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」

全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスとは

 まずは、決算・財務報告プロセスで行われる手続きについては、以下の記事をごらんください。

 上記記事に記載されているさまざまな決算手続きのうち、実施基準では、全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスとして、以下の手続きを例にあげています。

  • 総勘定元帳から財務諸表を作成する手続
  • 連結修正、報告書の結合及び組替など連結財務諸表作成のための仕訳とその内容を記録する手続
  • 財務諸表に関連する開示事項を記載するための手続

 主に、各事業拠点にわたって共通する基準やルール、方針等で管理される決算・財務報告プロセスが該当します。

 これらの決算・財務報告プロセスについて、もう少し具体的な例を挙げると、以下のようなものになります。

  • 勘定残高の確定・承認
  • 連結パッケージの作成や収集、および収集した連結パッケージのデータ検証
  • 連結処理における消去・修正仕訳
  • 開示のための財務諸表・注記情報・比較情報等の作成 など

全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制

 上場会社では、会社法、金融商品取引法、さらに取引所のルールにより、財務報告の開示には期限があります。

 よって、その期限に間に合うように、決算・財務報告プロセスを正確かつ迅速に行わなければなりません。

 また、決算・財務報告プロセスには以下のような特性があります。

  • 年に1度や四半期に1度しか行われないため、日常業務に比べて業務プロセスを見直す機会が少なく、ミスが起こりやすい
  • 期末日後に行われる業務が多いため、内部統制に不備があっても、評価基準日までの是正に間に合わない
  • 決算・財務報告プロセスで発生したミス等が財務報告の誤った開示に直結しやすい

 これらの事情により、単に個々の業務プロセスの効率や処理の適切性だけに注目するのではなく、社内管理体制の整備等、組織的な取り組み(=内部統制)が必要です。

 そのため、全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制の整備ポイントとして、主に以下のようなものになります。

会計方針

 企業グループの会計方針決算業務処理の方針、連結範囲を見直し、グループ共通の勘定科目コードの体系等を整えます。

 また、経理規程や経理処理に関連するその他の規程を整備します。(経理規程等の詳細は後述します)

経理部門体制

 近年は、会計基準の改正等、必要な経理知識が高度化していますので、教育体制を整備し、経理要員の継続的なスキルアップを図ります。

 また、決算時の業務量増大に対応するため、経理人員を確保します。

会計処理の標準化

 決算業務マニュアルを整備したり、決算スケジュールを定めます。

 また、計画通りに決算業務が進んでいるかをチェックできる仕組みをつくります。

 連結決算業務においては、連結パッケージ等の報告書式の設定と、親会社から子会社への連結パッケージ等に関するインストラクション、グループ共通の連結システム等の利用を検討します。

決算業務の分掌、職務権限

 決算業務の分担表を作成し、複数人の目で業務のチェックができるような、内部牽制が働く体制を築きます。

 前述の経理人員の増員や、業務マニュアルの整備と同様に、経理業務の属人化を防ぐ意義もあります。

IT統制

 会計システムや連結システムとその他の業務処理システムとの間で、ミスの起こりにくい連携がとれていることが重要です。

 さらにIT統制として、会計システムへのアクセスコントロールや、スプレッドシートの管理等の仕組みも整えなくてはなりません。

 また、リモートワーク環境の場合、電子化されたエビデンスの保管・管理や、新たなシステムの習熟等、リモートワークならではのリスクへの対応も必要になります。

経理規程等の整備

 決算業務のみならず、経理業務の正確性や迅速性を確保するためには、経理規程やマニュアル、細則等によって、あらかじめ会計処理方針を定めておくべきです。

 行き当たりばったりの恣意的な会計処理や、属人化による職務遂行の停滞を防ぐことにもなります。

 経理規程では、主に以下のような事項を定めます。

  • 基本的事項:目的、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠している旨、内部統制の構築、会計年度、決算および連結決算、経理組織、書類の保存期限、規程の改廃手順 など
  • 勘定体系・帳簿組織体系:勘定科目適用方針、帳簿体系、伝票・証憑、会計帳簿の保存期限 など
  • 金銭出納・資金業務:金銭の範囲、出納責任者、資金調達、有価証券 など
  • 債権・債務:収益認識基準、債権回収、貸倒れ など
  • 棚卸資産、固定資産、投資その他資産:取得原価、減価償却、減損 など
  • 決算:月次決算・四半期決算・年次決算の基本方針、作成書類、承認体制、税務申告 など

 なお、経理規程等の整備には、以下のような点に注意します。

会社の実態に即した内容か

 規程を作成する際に、他社事例を参考にすることがよく見受けられます。

 しかし、企業の業務実施状況が影響する経理規程の場合、他社の規程を一部修正しただけでは、なかなか自社に適した内容にはなり得ないと考えられます。

 そのため、会社の経理処理の実態を十分に把握し、それに合わせて作成する必要があります。

 また、可能であれば、企業グループ間で統一した会計方針がとれるようにしておくことも大切です。

運用が可能な内容か

 社内規程の作成において、「現状どうあるか」ではなく「あるべき理想像」を想定して作成している場合があります。

 しかし、業務管理の手順を定める規程においては、法令等に違反していない限り、なるべく現状の業務実態に合わせて規程を作成する必要があります。

 なぜなら、実際に運用が難しい規程の内容になりかねないからです。

定期的に見直しているか

 近年は、会社の事業展開の変化や、ITシステムの導入や改修等、業務フローを変更するような経理業務の環境変化が短期間で起こることも珍しくありません。

 業務手順の変更が適切に行われていても、規程が従来のままというような状況にならないために、規程の定期的な見直しが必要です。

関連する諸規程がそろっているか

 会計処理に影響を与えるような業務に関する以下のような業務管理規程やマニュアルを不足なく整備します。

  • 販売管理規程
  • 購買管理規程
  • 原価計算規程
  • 予算管理規程
  • 棚卸資産管理規程
  • 固定資産管理規程
  • 与信管理規程
  • 生産管理規程 など

 会社の業務拡大や組織が成長するにつれ、規程の数も増えていきます。

 規程を体系的に整理し、それぞれの規程間において整合がとれているかを確認します。

全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスの評価方法

 実施基準において、全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスの評価について、以下のように述べられています。

主として経理部門が担当する決算・財務報告に係る業務プロセスのうち、全社的な観点で評価することが適切と考えられるものについては、全社的な内部統制に準じて、全ての事業拠点について全社的な観点で評価することに留意する。

「全社的な内部統制に準じて」:

 全社的な内部統制の評価は、主にチェックリストを用いて評価が行われますので、全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスについても、チェックリストを用います。

 ただし、全社的な内部統制の場合、実施基準の「財務報告に係る全社的な内部統制に関する評価項目の例」を参考にチェックリストが作成することができますが、全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスについては、一般的に広く利用されているチェックリストが存在するわけではありません。

 よって、それぞれの企業グループに応じたチェックリストを作成する必要があります。

「全ての事業拠点について全社的な観点で評価する」:

 決算・財務報告プロセスの評価手続きの前に、全社的な内部統制の評価において、評価対象とする事業拠点を選定されます。

 全社的観点で評価する決算・財務報告プロセスは、その選定された事業拠点において評価手続きを進めていくことになります。

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