「全体的な内部統制」の整備において、組織内のすべての者が内部統制を理解して業務を遂行するために、規程類の作成によるルールの文書化は欠かせません。
この記事では、社内規程について簡単にまとめました。
標準的な社内規程の種類
まずは、企業においてよく見られる標準的な社内規程の種類について、以下の図にまとめました。

当然ながら、企業の事業や業務内容等によって、制定が必要な社内規程は違います。
働き方改革への取り組みを行っている企業では、それに即した社内規程(リモートワーク規程等)を作られている場合もあることでしょう。
どうあれ各企業の状況に応じた社内規程を作成する必要があります。
規程類の作成ポイント
企業が規程を制定するタイミングは、主に法令の要請や事業拡大、IPO準備等により、その必要性が生じたときが多いのではないでしょうか。
法律的な必要性に応えて作成する規程としては、法人設立時の「定款」や、常時10人以上の従業員を雇用するときの「就業規則」等があります。
小規模の企業ではこれらの規程しか社内に存在しない場合もあると思われます。
そのような企業がIPO準備を開始した場合、数多くの未整備の規程を作成することになります。
以下に規程作成の主な手順を挙げました。
STEP1 既存の規程類を収集する
すでに制定している規程類を収集し、現状の規程類の整備状況を確認します。
STEP2 作成が必要な規程を決定する
未整備の規程のうち、作成が必要な規程を洗い出します。
特にコーポレートガバナンスの状況に関わる取締役会規程や監査役関連の規程、業務運営の基礎となる職務分掌や職務権限等の組織関係規程の作成が優先的に作成されます。
STEP3 規程の草案(ドラフト)を作成する
規程の草案を作成する際には、以下の点に注意が必要です。
- 法令や他規程と整合性がとれている
- 会社の状況や実際の業務に適合している
- 規程作成要領を作成し、フォーマットを統一する
STEP4 制定・改訂した規程を周知徹底する
取締役会の承認等の必要な手順をとって制定・改訂された規程を、電子メールやイントラネットを利用して全従業員に周知します。
STEP5 定期的に規程類の見直しを行う
企業内外の状況は常に変化していますので、企業を取り巻くリスク等も変わり続けています。
それに対応するためにも定期的な規程類の見直しが必要です。
規程類の見直しは日々の業務に追われて後回しになりがちですので、あらかじめ見直しの時期を定めておきましょう。
内部統制において重要となる主な規程類の概要
規程の種類 | 概 要 | ポイント |
取締役会規程 | 取締役会の運営に関する規程 | ・重要な使用人や組織編成、人事制度等についての決議 ・監査役の取締役会への出席 ・取締役の不正行為等があった場合における監査役からの報告 ・内部統制システムに係る体制の整備についての決議 ・IT戦略等を含めた中期経営計画等の決議 |
監査役会規程 | 監査役会の運営に関する規程 | ・監査役による内部統制システムの構築・整備状況の監視 ・内部監査部門との連携による組織的かつ効率的な監査の実施 ・会計監査人との連携による実効的な監査の実施 ・監査役の調査等の権限 |
組織規程(組織図) | 経営組織に関する基本事項 | ・会社内のすべての組織単位(部・課等)や職位(部長・課長等)の明確化 ・指揮命令系統や業務分掌、職務権限の基本的な考え方を定義 |
業務分掌規程 | 組織単位の業務範囲に関する規程 | ・規定した業務範囲の実態との整合 ・内部牽制が有効に働く業務分担 |
職務権限規程 | 職位の権限に関する規程 | 個々の職能や承認権限行為等、職務に対する責任と権限の対応関係が適切な権限の設定 |
稟議規程 | 稟議事項における決裁手続に関する規程 | 統制活動および内部監査の質を確保するための稟議手続の明確化 |
関係会社管理規程 | 関係会社の管理に関する規程 | ・親会社への定期的な報告とその内容 ・親会社の監査役や内部監査の監査権限の設定 ・親会社が承認権限をもつ決裁事項と手続内容 |
リスク管理規程 | リスク評価と対応に関する規程 | ・リスク管理委員会の設置および運営方法等 ・経営者等への情報伝達経路 |
内部通報規程 | 法令違反等の内部通報に関する規程 | ・内部通報の窓口設置 ・企業内外からの通報に対する処理手続 ・通報者の不利益処遇等からの保護 |
内部統制規程 | 内部統制に関する基本的事項 | ・プロセスオーナーの規定 ・プロセスオーナーによる3点セット等文書管理 ・独立的評価結果(開示すべき重要な不備を含む)の経営者、取締役会、監査役等への報告 ・内部統制の不備に対する是正手続 |
情報セキュリティ基本規程 | 情報セキュリティの維持・向上に関する基本的事項 | 情報セキュリティに関する基本方針の規定 |
経理規程 | 経理事務の処理に関する規程 | ・一般的に公正妥当と認められた企業会計の原則および基準の遵守 ・業務遂行に関する取引を正確、かつ迅速に処理し、会社の財政状態および経営成績に関し、真実な報告を行う旨の記載 ・会計処理基準の変更における決裁等手続 |
予算管理規程 | 予算編成および予算統制に関する規程 | ・予算統制部署、予算編成部署の規定 ・予算原案および修正案の検討、審議、承認手続 ・予実差異分析の報告 |
就業規則 | 従業員の就業に関する規程 | ・経営理念や企業倫理を逸脱した行動を起こした際の罰則・懲戒 ・業務に必要な知識、技能の向上に資する教育訓練機会の提供 |
人事考課規程 | 業務成績や能力等に基づいた人事評価に関する規程 | 客観的・具体的事実に基づいた公正な評価(内部通報の報復等の恣意的評価の排除) |
情報システム管理規程 | 情報システムに関連する手続等に関する規程 | ・情報セキュリティの問題発生に対する予防策 ・情報セキュリティの問題発生後の対応策 |
規程類と業務プロセス
業務を管理するには、整備された手順に従って業務が行われるように、その「手順」を社内規程やマニュアルで明文化する必要があります。
企業活動における代表的な業務プロセスである販売プロセスと購買プロセスを例に、これらの手順を定める主な社内規程との関連を簡単にまとめました。
<販売プロセス>
プロセス | 販売管理規程 | 与信管理規程 | 棚卸資産管理規程 | 経理規程 |
新規取引 | 〇 | |||
与信管理 | 〇 | |||
受注 | 〇 | |||
出荷 | 〇 | 〇 | ||
売上計上 | 〇 | 〇 | ||
請求 | 〇 | 〇 | ||
入金 | 〇 | 〇 | ||
返品 | 〇 | 〇 | 〇 | |
売掛金管理 | 〇 | |||
貸倒処理 | 〇 | |||
貸倒引当金設定 | 〇 |
<購買プロセス>
プロセス | 購買管理規程 | 棚卸資産管理規程 | 経理規程 |
新規取引 | 〇 | ||
発注 | 〇 | ||
入荷・検収 | 〇 | 〇 | |
仕入計上 | 〇 | 〇 | |
支払 | 〇 | 〇 | |
返品 | 〇 | 〇 | 〇 |
買掛金管理 | 〇 | ||
在庫管理 | 〇 | 〇 | |
在庫処分 | 〇 | 〇 |
経営者の姿勢および意思の明示
経営者は、内部統制の整備・運用によって、目標を達成するために組織運営をどのように行っていくかを定め、組織内のすべての者に規定された行動を促します。
そのために、社内規程等を作成してルールを文書化し、あるべき姿を誰にでも明確に分かるようにします。
その中でも、特に経営者の意思をより強力に伝達・周知させるため、以下のような方針や計画の作成がよくみられます。
- 経営理念(ビジョン・ミッション・バリュー等):企業経営の基本的な軸となる考え方や価値観
- 行動指針(クレド、10カ条等):経営理念を実現するための規範となる従業員の行動の基本的な指針
- 財務報告に係る内部統制基本方針:信頼性のある財務報告に関する内部統制の役割を明確にした内部統制に関する基本的方針
- 中長期経営計画:経営理念を実現するために中長期の視点で定めた経営計画
これら方針や計画においても、主に基本的要素「統制環境」の一環として、内部統制上重要な意義があります。