【サンテック】工事の見積もりミスで巨額損失

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第三者委員会等調査報告書の要約

 株式会社サンテックは、2024年3月期の連結計算書類等に対して監査意見を表明しない旨の監査報告書を監査法人から受領しました。これは、同社が受注した特殊工事の積算誤りや、受注後の採算管理の不備が原因でした。その後、同社は外部の有識者で構成される第三者調査委員会を設置し、調査を行いました。

 この記事では、同社が公表した第三者調査委員会の調査報告書に記載されている不適切行為の内容、発生原因に焦点を当てて要約しています。

※詳細は株式会社サンテック第三者調査委員会「調査報告書」(PDF)をご確認ください。

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第三者調査委員会の設置経緯

 サンテックは、2024年3月期の決算において重大な問題に直面しました。2024年5月27日、会計監査人のR監査法人から、会社法に基づく連結計算書類等および計算書類等の会計監査について、監査意見を表明しない旨の監査報告書を受領しました。同日、2024年3月期の第1四半期から第3四半期の各四半期財務諸表についても、結論を表明しない旨の四半期レビュー報告書を受領しました。これは、以前に提出された無限定の結論から訂正されたものです。

 さらに、2024年6月25日には、R監査法人から金融商品取引法に基づく連結財務諸表及び財務諸表等に対しても、監査意見を表明しない旨の監査報告書を受領しました。

 この状況を重く受け止めたサンテックは、監査意見が不表明となった経緯や原因を究明し、ステークホルダーへの説明責任を果たすため、客観的かつ公正な調査が不可欠だと判断しました。また、次の会計監査人を探索するためにも、この調査が必要と考えました。

 そこで、サンテックは2024年6月10日および18日の取締役会決議により、サンテックと利害関係のない外部の弁護士および公認会計士で構成される第三者委員会を設置しました。

 なお、サンテックは6月25日に定時株主総会を予定通り実施し、監査意見が不表明であったにもかかわらず計算書類を承認可決しました。また、6月26日には監査意見を表明しない旨の報告書を受領したまま、有価証券報告書を提出しています。

会社概要

  • 資本金:1,190,250千円(2024年3⽉末)
  • 事業内容:内線工事、電力工事、空調給排⽔⼯事、機器製作
  • 従業員数:連結1,356⼈(2024年3⽉末)、単体801⼈(2024年3⽉末)
  • コーポレートガバナンス体制:サンテックは監査役制度を採⽤し、会社の機関として取締役会及び監査役会を設置しており、重要な業務執⾏の決議、監督並びに監査をしている

特殊⼯事に係る監査未完了

 TN工事は、NE社が発注する自動車専用道路のトンネル内照明設備更新工事です。2021年9月に受注されましたが、実行予算の見積もり誤りや採算管理の不備により大幅な損失が発生しました。

 この問題の根本的な原因は、サンテックの経験不足にありました。入札時の見積もりが不正確で、ケーブルの長さや車線規制に係る人件費の見込み違いなどのミスが発生しました。さらに、工事開始後も実行予算と発生費用の検証が適切に行われず、多額の差異を認識したのは2023年4月以降でした。

 TH支社内のコミュニケーション不足も大きな問題でした。支社長のワンマン体制によりチェック体制が形骸化し、世代間の考え方の違いも問題を複雑にしました。また、TH支社と本社とのコミュニケーションも不足しており、現場任せの風土が影響し、本社でYTN工事の損失額を認識したのは2024年1月10日の経営会議でした。

 原価管理システムと経理処理にも問題がありました。原価回収基準に対応していないシステムを使用しており、適切な損失認識ができませんでした。また、監査法人交代に伴い、新任のR監査法人とサンテックの間に不信感が生まれ、コミュニケーションが円滑に行われなくなりました。

 さらに、会社法監査および金商法監査での意見不表明の重大性が社内で十分に理解されておらず、監査法人への対応も不適切でした。要求された資料や説明に適切に対応できず、特に海外子会社を含めたグループ全体の特殊工事に関する網羅性の検証に必要な資料を適時に提供できませんでした。

 損益の期間帰属については、YTN工事の工事原価増額596.3百万円が、75期(2022年3月期)に196.7百万円、76期(2023年3月期)に205.5百万円、77期(2024年3月期)に194.1百万円と帰属すると判断されました。これにより、過年度遡及修正の検討が必要となりました。

 類似工事案件の検証では、国内工事および海外工事において、過去3年間にYTN工事のような多額の工事損失引当金を計上するものは検出されませんでした。

共⽤資産の減損に係る監査未完了

 サンテックは3期連続で赤字であり、共用資産を含む減損の検討が必要でしたが、当初その理解が不足していました。監査法人への説明が一貫せず、検討資料も不十分だったため、R監査法人は意見不表明としました。前任のT監査法人は当社の資産状況を把握し、必要に応じて個別対応していましたが、R監査法人は会社側からの資料提供を待つ姿勢だったため、サンテックが対応できませんでした。

 サンテックは「監査法人が何とかしてくれる」という受け身の姿勢が常態化しており、意見不表明に対する理解や危機感も社内で共有できていませんでした。

 しかし、サンテック作成の資料を確認したところ、固定資産の正味売却価額の合計額が帳簿価額の合計額を上回っていたことから、共用資産を含むより大きな単位において減損損失の必要がないことが確認されました。

意⾒不表明となった要因分析

 意見不表明の監査報告書が提出された主な要因は以下のとおりです。

  • YTN工事の受注当時の見積誤りと受注後の採算管理の不備が発端となった
  • 工事損失が検出された時期が監査終了予定日近くであり、対応する時間的余裕がなかった
  • YTN工事の問題は過去の誤謬の訂正に該当するため、過去に遡及して訂正し、修正再表示を検討する必要があったが、訂正すべき金額と期間帰属を取りまとめ、当期及び過去の財務諸表を訂正・作成し、監査報告書提出日までに監査法人に提示することができなかった
  • サンテックは監査手続きの延期を選択せず、株主総会の招集通知及び有価証券報告書の提出日程を優先したことにより、監査法人側は監査意見を出すことができず、意見不表明の監査報告書となった
  • サンテックは、「意見不表明」の影響を当時それほど深刻に捉えていなかった
  • 監査法人との関係については、前任のT監査法人と新任のR監査法人の対応の違いにより、R監査法人との間に違和感が蓄積し、信頼関係が希薄になっていた
  • 社内で会社法監査及び金商法監査のそれぞれ意見不表明の監査報告書を受領することについて、正しく理解している者が存在していなかったか、存在していたとしても、声を上げてそれを回避するように働きかける術がなかった

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