内部統制に関わる人たち

スポンサーリンク
内部統制入門編

 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(以下「内部統制基準」という)では、内部統制に関係を有する者として、以下の項目が挙げられています。

  • 経営者
  • 取締役会
  • 監査役等
  • 内部監査人
  • 組織内のその他の者

 また、内部統制基準では、財務諸表監査を行う監査人が内部統制監査を行うことについて規定されています。

 この記事では、それぞれの役割や責任について簡単にまとめました。

スポンサーリンク

経営者

 内部統制基準では、経営者について、以下のように説明されています。

 経営者は、組織の全ての活動について最終的な責任を有しており、その一環として、取締役会が決定した基本方針に基づき内部統制を整備及び運用する役割と責任がある。
 経営者は、その責任を果たすための手段として、社内組織を通じて内部統制の整備及び運用(モニタリングを含む。)を行う。
 経営者は、組織内のいずれの者よりも、統制環境に係る諸要因及びその他の内部統制の基本的要素に影響を与える組織の気風の決定に大きな影響力を有している。

 さらに、同じく内部統制基準では、財務報告に係る内部統制の報告について、以下のように記されています。

 経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性の評価に関する報告書(以下「内部統制報告書」という。)を作成するものとする。

たくさんあるけど結局どういうこと?

 これらをまとめると、経営者の役割や責任とは以下のとおりとなります。

  1. 内部統制の整備および運用、評価についての最終責任者
  2. 「統制環境」をはじめ、内部統制の6つの基本的要素に最も影響を与える存在
  3. 内部統制報告書」の開示

1.内部統制の整備および運用、評価についての最終責任者

  • 整備…ルールや基準を社内規程やマニュアルなどで明文化すること
  • 運用…整備された社内規程やマニュアルどおりに業務を行うこと
  • 評価…内部統制の整備状況や運用状況をチェックし、内部統制が機能しているかを確認すること

 経営者自身がこれらの業務を実際に行うわけではありませんが、リーダーシップを発揮することにより、これらの業務を強力に推進する役割と責任を担っています。

2.「統制環境」をはじめ、内部統制の6つの基本的要素に最も影響を与える存在

 1.のとおり、経営者が内部統制についての最終責任者になるため、内部統制のレベル感は、経営者の倫理観や価値観の基準がそのまま反映されます。

 いわば、内部統制は経営者そのものです。

 ここで重要なのは、経営者自身がルールを無視して暴走(マネジメント・オーバーライド)した場合の防止策を講じておくことです。

 職務権限規程などで権限を委譲したり、取締役会や監査役等が経営者に対して監視・監督します。

3.「内部統制報告書」の開示

 経営者は、内部統制の評価結果を「内部統制報告書」として開示することで、株主などへの説明責任を果たします。

取締役会

 内部統制基準では、取締役会について、以下のように説明されています。

 取締役会は、内部統制の整備及び運用に係る基本方針を決定する。
 取締役会は、経営者の業務執行を監督することから、経営者による内部統制の整備及び運用に対しても監督責任を有している。
 取締役会は、「全社的な内部統制」の重要な一部であるとともに、「業務プロセスに係る内部統制」における統制環境の一部である。

 これらをまとめると、取締役会の役割や責任は以下のとおりとなります。

  1. 内部統制の基本方針を決定
  2. 経営者の職務執行を監督
  3. 全社的な内部統制」の一部、および「業務プロセスに係る内部統制」における統制環境の一部

1.内部統制の基本方針を決定

 会社法362条第5項で、大会社である取締役会設置会社は、取締役会により「業務の適正を確保するための体制」(=内部統制システム)を決定しなければならないと定められています。

2.経営者の職務執行を監督

 会社法362条第2項で、取締役会は取締役の職務の執行の監督を行う旨が定められています。

 この「取締役」には代表取締役も含まれ、取締役会には経営者によるマネジメント・オーバーライドを防ぐ責任があります。

3.「全社的な内部統制」の一部、および「業務プロセスに係る内部統制」における統制環境の一部

全社的な内部統制」と「業務プロセスに係る内部統制」ってなに?

 「全社的な内部統制」とは、経営理念や倫理規程、就業規則など、全社にわたる内部統制のことです。

 取締役会は、取締役の業務執行の監督や、内部統制システムの決定などの役割を担っていますので、その行為は全社的に影響を与えます。

 また、「業務プロセス」とは、販売業務や仕入業務、支払業務など、個別の業務におけるプロセスのことです。

 そして「業務プロセスに係る内部統制」とは、それらの業務のマニュアル作成や、業務に潜むリスクに対する上長の承認、資料の突合せ照合作業などの統制のことです。

 業務執行取締役は各々の職務権限においてそれらの業務を管理・監督し、取締役会はその取締役を監督しています。

監査役等

 内部統制基準では、監査役等について、以下のように説明されています。

 監査役等は、取締役及び執行役の職務の執行に対する監査の一環として、独立した立場から、内部統制の整備及び運用状況を監視、検証する役割と責任を有している。

 会社法において、監査役等は取締役等の職務の執行を監査する旨が定められており、経営者によるマネジメント・オーバーライドを防ぐ立場にあります。

 また、日本監査役協会が公表している「内部統制システムに係る監査の実施基準」では、取締役の職務の執行に関する監査の一環として、以下の事項において監査を行うことを規定しています。

  • 内部統制決議の内容が相当でないと認める事由の有無
  • 取締役が行う内部統制システムの構築・運用の状況における不備の有無
  • 事業報告に記載された内部統制決議の概要及び構築・運用状況の記載が適切でないと認める事由の有無

 なお、監査役等がその役割を果たすためには、内部監査人や監査人等と連携し、能動的に情報収集することが求められます。

内部監査人

 内部統制基準では、内部監査人について、以下のように説明されています。

 内部監査人は、内部統制の目的をより効果的に達成するために、内部統制の基本的要素の一つであるモニタリングの一環として、内部統制の整備及び運用状況を検討、評価し、必要に応じて、その改善を促す職務を担っている。

 モニタリングには、「日常的モニタリング」と「独立的評価」がありますが、「独立的評価」の役割を担うのが内部監査人です。

 組織図的には経営者の直属になることが多く、経営者の代わりに内部統制の評価業務を実行します。

 また、評価結果に不備があれば、現場などに是正や改善を働きかけます。

 内部監査人は、その役割を果たすため、熟達した専門的能力と専門職としての正当な注意をもって職責を全うすることが求められます。

 なお、内部監査が実効力を保つためには、経営者に適時・適切に監査結果等が報告され、さらに、取締役会や監査役等への報告経路を確保し、必要に応じて指示を受けられる体制であることが重要です。

組織内のその他の者

 内部統制基準では、組織のその他の者について、以下のように説明されています。

 内部統制は、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスであることから、上記以外の組織内のその他の者も、自らの業務との関連において、有効な内部統制の整備及び運用に一定の役割を担っている。

 組織に属する限り、その組織の内部統制に関わらない人はいません

 それぞれの仕事の中で、社内規程やマニュアルに則り、割り当てられた権限と責任の範囲内で、任された務めを果たしています。

 具体的には、文書の維持・管理や、内部統制の基本的要素の一つであるモニタリングとしての「日常的モニタリング」の役割を担います。

 また、内部監査人が行った内部統制の評価の結果に不備があった場合、その是正や改善を行います。

財務諸表監査の監査人

 内部統制基準では、財務諸表監査の監査人が行う内部統制監査の目的について、以下のように説明されています。

 経営者による財務報告に係る内部統制の有効性の評価結果に対する内部統制監査の目的は、経営者の作成した内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠して、内部統制の有効性の評価結果を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人自らが入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある。

一文が長くてむずかしいよ…

これを簡単にまとめると、監査人の役割は以下のとおりとなります。

  1. 経営者が作成した「内部統制報告書」の監査
  2. 監査結果を意見として表明

1.経営者が作成した「内部統制報告書」の監査

 監査するのはあくまで「内部統制報告書」が適正かどうかであって、内部統制の整備・運用状況そのものを監査するのではありません。

2.監査結果を意見として表明

 監査人は「内部統制監査報告書」において、以下の意見のいずれかを表明します。

  • 無限定適正意見
  • 不適正意見
  • 限定付適正意見
  • 意見不表明
タイトルとURLをコピーしました