【アドバンスクリエイト】売上前倒しと組織的隠蔽

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第三者委員会等調査報告書の要約

 株式会社アドバンスクリエイトでは、保険代理店事業の代理店手数料について、将来の手数料の割引現在価値(PV計算)を保険契約成立時に売上計上していましたが、PV売上の過大計上の疑いが指摘されました。これを受け調査委員会を設置し、調査報告書を受領しています。

 さらに外部機関からの指摘を端緒として、アドバンスクリエイトおよび完全子会社の株式会社保険市場における広告取引やソフトウェアの資産計上等でも不適切な会計処理の疑義が判明しました。

 アドバンスクリエイトは事実解明のため、2026年5月8日の取締役会決議により独立した第三者委員会を設置しました。

 本記事では、調査報告書に記載されている不適切会計の内容、発生原因に焦点を当てて要約しています。

※詳細は株式会社アドバンスクリエイト第三者委員会「調査報告書」(PDF)をご確認ください。

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会社概要

  • 資本金:100,000千円(2025年9月30日現在)
  • 連結売上高:6,608,055千円(2025年9月期)
  • 従業員数:連結229名(2025年9月30日現在)
  • グループ事業内容:保険代理店事業、メディア事業、再保険事業、ASP事業、BPO事業、メディアレップ事業
コーポレートガバナンス体制
  • 取締役会:取締役8名(うち社外取締役5名)で構成、毎月1回定時開催
  • 監査役会:監査役4名(うち社外監査役2名)で構成
  • 指名・報酬・ガバナンス委員会:社外取締役が委員長となり、社外取締役5名及び代表取締役社長で構成
  • コンプライアンス委員会:代表取締役社長が委員長となり、コンプライアンス担当役員、社内委員及びオブザーバーにより構成
  • 経営会議:代表取締役社長が議長となり、社内取締役及び執行役員で構成

売上前倒計上の実態 ― 合計約75億円の不正

 保険市場社のメディア事業等において、遅くとも2018年12月から2025年9月までの間、合計約75億800万円の売上前倒計上が行われていたことが判明しました。影響額が最も大きかった事業年度は2022年9月期で、約3億6,500万円に上ります。

どのように不正が行われたのか

 保険市場社のメディア事業では、保険会社等に対して自社サイト「保険市場」の広告掲載枠を期間を定めて販売し、その対価を「広告掲載期間にわたって按分計上する」のが収益認識基準に基づく正しい処理です。

 社内規則である「営業収益計上細則」にも、広告出稿期間にわたり収益を認識すると明記されていました。

 しかし実際には、保険会社等から「ご注文内容確認書兼申込書」を取得した時点で、将来の広告掲載期間分を含む対価を一括して売上計上していました。この申込書には広告掲載期間が意図的に記載されていませんでした。

 一方で、別途作成される見積書や提案書には、将来の掲載期間が明記されていました。このギャップを利用し、まだ広告が掲載されていないにもかかわらず、契約を受注した月に対価の全額を売上として計上するという前倒しが常態化していました。

 経理処理を担当する職員の多くは会計知識に乏しく、申込書の記載内容をそのまま売上計上月とする「業務慣行」に従って処理していたため、現場でのチェックは形骸化していました。

 また、総合企画部経理課が売上計上の証憑として確認していたのも、広告掲載期間の記載がない申込書のみであり、見積書や提案書に記載された実際の掲載期間との照合は行われていませんでした。

監査法人への組織的な隠蔽工作

 売上前倒計上の露見を防ぐため、営業担当役職員らは監査法人(桜橋監査法人)に対する組織的な隠蔽工作を行っていました。

 まず、桜橋監査法人が保険会社等に残高確認を行う前後に、保険会社等の担当者に対して「差異なし」と回答するよう誘導し、回答文面を事前に伝え、監査法人に送る前にまず自社宛に送付するよう依頼するなどの介入を行っていました。

 さらに、広告掲載期間を想起させる文言を意図的に削除した提案書を桜橋監査法人に提出したり、役務提供がすでに完了しているかのような体裁を整えた資料を新たに作成して提出するなど、偽装工作は多岐にわたっていました。

主要関与者の認識と責任

 保険市場社代表取締役社長を務めた橋本孔治氏は、売上前倒計上が不適切であると認識しつつ、四半期末に多くの売上を計上したいがために、あえて売上前倒計上を実行していました。橋本氏は自らも残高確認への対応を主導し、保険会社等に「差異なし」の回答を直接依頼していました。

 橋本氏の後任として保険市場社代表取締役に就いた田坂貴典氏も、同様の認識のもとで前倒計上に主体的に関与し、監査法人への偽装工作にも及んでいました。

 田坂氏は「過去の広告掲載期間が終了した分の売上である」と主張しましたが、保険会社等はいずれも将来の広告掲載に対する対価として支払っている認識であり、田坂氏の弁解を裏付ける証拠は見つかりませんでした。

 保険市場社を管掌する当社専務取締役の櫛引健氏も、売上前倒計上が不適切であることを認識しながら、桜橋監査法人による保険会社等への一斉調査の際、各社に対して監査法人への回答案を提示して誘導するなどの対応を行っていました。

 一方、代表取締役社長の濱田佳治氏については、申込書等の証憑類を日常的に目にする立場ではなく、保険会社等との営業にも直接従事していなかったことから、売上前倒計上がなされているという認識は認められませんでした。

 第三者委員会は、一連の売上前倒計上を「財務諸表の意図的な虚偽の表示である不正会計」と結論づけています。

P社との取引スキーム ― 「借金」と「返済」の繰り返し

 アドバンスクリエイトおよび保険市場社と、広告運用委託先であるP社との間で、「借金」と「返済」を繰り返す不正なスキームが構築されていたことも判明しました。

2つの類型

 このスキームには大きく2つの類型がありました。

 第一の「反対給付型」は、保険市場社がP社に対して自社サイトの広告枠を販売し、その対価を一括で売上計上するものです。ただし、この販売には常に反対給付の合意が伴っていました。

 すなわち、P社が負担する広告枠購入費用を、後続の広告運用委託取引においてマージン率の引上げ、配信量の増加、クリエイティブ費用の上乗せ支払い等を通じて実質的に補填する約束がされていたのです。

 合計5回・総額4億8,900万円の広告枠販売取引が行われましたが、P社が購入した広告枠を実際に利用して広告を出稿した実績はほとんどなく、わずかな出稿実績も、監査法人から証拠の提出を求められた時期に合わせて形式的に作出されたものにすぎませんでした。

 第二の「費用繰延型」は、P社に支払うべき外注費について「値引き」名目で一時的に支払いを猶予し、翌四半期以降の請求に上乗せして返済するものです。合計5回、2億9,300万円の繰延べが行われました。

 繰延べ分と通常の請求を外見上区別できないようにするため、P社に交付する請求書から「役務提供期間」の記載を削除させるという偽装も施されていました。

 「借金」の残高は、アドバンスクリエイトとP社との間で「配信計画表」「ご返済計画表」等と題するExcelファイルを用いて1円単位まで精緻に管理されていました。「返済」は単なる費用補填にとどまらず、P社への利益供与を含んでおり、全期間を通じた超過額は約1億200万円に上りました。

ソフトウェアの虚偽資産計上

 「返済」の一環として、アドバンスクリエイトはP社から「●● for アドバンスクリエイト」なるソフトウェアを取得したとして、2023年10月に7,000万円を無形固定資産として資産計上しました。

 しかし、実際にP社から納品されたのはソフトウェアではなく、広告運用の過程で制作された画像データ等約2,000枚にすぎませんでした。ソフトウェア実務指針に照らせば、これはソフトウェアではなくコンテンツに該当し、資産計上の要件を満たしません。

 さらに、P社があずかり知らないところで、あたかもP社が作成したかのような取扱説明書がアドバンスクリエイト内で作成されるなど、虚偽の証憑が作られていたことも明らかになっています。

 第三者委員会は、これらP社取引スキーム全体についても「財務諸表の意図的な虚偽の表示である不正会計」と認定しました。

原因分析 ― 創業者を頂点とする企業風土

 第三者委員会は、不正の根本原因として、創業者兼筆頭株主であった代表取締役・濱田佳治氏を頂点とする企業風土を指摘しています。

過度な業績達成圧力

 濱田氏が社内向けに発信していたプライム市場上場維持、さらには「時価総額1,000億円」という目標から逆算された「あるべき数値」の達成が、執行側に強く求められていました。連結予算は毎期未達であるにもかかわらず前年比100%以上の予算が設定され続けていました。

 2023年9月期には、保険市場社の売上目標が当初予算の2,168百万円から3,581百万円(165%増)に増額修正されるなど、過大な目標が課されていました。

 報告書には、濱田氏が管理部門役職員に対してSlackで「殺してしまうかも知れない」「ボケ!」「売上増やせ!費用値引き!資産計上!徹底的にやれ。」「管理部門がアホ過ぎて、相当な損をしている」等と発信していた記録が引用されています。

 経理部門担当役員自身も「あるべき数値」の達成プレッシャーにさらされており、経理部門が牽制機能を発揮する前提がそもそも欠如していました。

「忖度と畏縮の心理」と同質化した組織

 社外役員へのヒアリングからは、組織全体に濱田氏への「忖度と畏縮の心理」が広く浸透していたことが明らかになっています。濱田氏の意に沿わない意見を述べる者は厳しい叱責や評価低下を受け、異論を述べる者が組織に残りにくい環境が形成されていました。

 2022年10月以降は毎年約2割の人材が入れ替わり、歴代の総合企画部長らが体調不良等で退職する事態に至っています。会計専門家として採用されたv氏は不適切な会計処理を是正しようとしましたが、その知見は活かされず、むしろ組織から排除しようとする動きが生じました。

 一方、濱田氏の意向に沿った数値を作ることで重用された人物が長期間経理全般をマネジメントしていた事実は、当社の組織風土を端的に表しています。

三線防衛の全面的な機能不全

 内部統制面では、いわゆる「三線防衛」がすべて機能不全に陥っていました。

 第一線である保険市場社では、代表取締役自らが不正を主導していたため自律的統制は不可能でした。

 第二線の経理部門は、担当役員が業績圧力下に置かれ牽制機能を果たせず、少人数かつ経理経験の乏しいメンバーで運営されていました。

 第三線の内部監査室も、不正リスクに踏み込んだ監査を実施していませんでした。

 桜橋監査法人からは売上の期間帰属について複数回にわたり指摘がありましたが、常勤監査役からこの指摘が監査役会や取締役会に報告された形跡はなく、社外役員にも共有されていませんでした。社外役員が適切な情報を受け取っていれば、より早期に問題が発見された可能性があります。

 内部通報制度として「スピークアップ制度」が設置されていましたが、2018年9月期から2022年9月期まで通報件数は0件と、事実上形骸化していました。不正に疑問を持つ担当者がいたとしても、上司自らが主導する不正を通報できる環境にはなかったと考えられます。

補足:3ラインモデルとコーポレートガバナンス

 本件の原因分析を読み解くうえで、「3ラインモデル」の基本的な考え方を押さえておくと理解が深まります。3ラインモデルとは、IIA(内部監査人協会)が提唱した、組織のガバナンスとリスク管理における役割分担のフレームワークです。

 第1ラインは、事業部門や営業現場など、日々の業務を遂行しながらリスクを直接管理する部門です。自らの業務に内在するリスクを認識し、社内ルールに従って適切に対処する最前線の役割を担います。

 第2ラインは、経理・財務部門やコンプライアンス部門など、第1ラインの活動を監視・支援する管理部門です。全社的なルールや基準を整備し、第1ラインが適切にリスク管理を行っているかをモニタリングする「牽制機能」を果たします。

 第3ラインは内部監査部門であり、第1ライン・第2ラインの双方から独立した立場で、リスク管理やガバナンスの仕組み全体が有効に機能しているかを客観的に評価・保証します。

 そして取締役会や監査役会は、この3つのラインの上位に位置し、各ラインが適切に機能しているかを監督する責任を負っています。

 コーポレートガバナンスにおいて、この3つのラインがそれぞれ独立して機能していれば、不正やリスクが一つの防衛線をすり抜けても次の防衛線で検知・是正できます。逆に、複数のラインが同時に崩れた場合には、本件のように長期間にわたる不正が見過ごされる事態を招くことになります。

 本件では、第1ラインの保険市場社で代表取締役自らが不正を主導し、第2ラインの経理部門は業績圧力の下で牽制力を失い、第3ラインの内部監査室も不正リスクに踏み込めませんでした。

 加えて、3つのラインの上位で監督責任を負うべき取締役会や監査役会に対して、監査法人からの重要な指摘が共有されず、社外役員が問題を認識する機会すら奪われていました。

 3ラインモデルのすべての階層が同時に機能不全に陥ったことが、7年以上にわたる不正の継続を許した構造的な要因であったといえます。

まとめ

 本件の不適切な会計処理は、約75億円の売上前倒計上、約4億9,000万円の広告枠販売取引による売上過大計上、7,000万円の虚偽のソフトウェア資産計上、約2億9,000万円の外注費繰延べなど、多岐にわたります。

 その背景には、創業者への過度な忠誠心と業績達成圧力、それにより形骸化した内部統制、そしてリスク情報が社外役員に共有されないガバナンスの欠陥がありました。第三者委員会は、これらを総合して「財務諸表の意図的な虚偽の表示である不正会計」と認定しています。

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