はじめに
2025年に開示された財務報告に係る内部統制の重要な不備について、AIを活用して簡単にまとめてみました。
なお、参照した情報は以下の開示に類するものの記載内容のみであり、これらの重要な不備に関連する第三者委員会の報告書の内容は参照しておりませんのでご了承ください。
- 財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ
- 内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ
また、拾い漏れた開示があるかもしれませんので、その点についてもご容赦いただければ幸いです。
開示件数の概要
2025年に財務報告に係る内部統制の重要な不備を開示した企業数は52社(延べ件数60件)でした。
なお、2025年において内部統制の重要な不備に関する開示を複数回行った企業は、アクアライン、サンウェルズ、ナ・デックス、トーシンホールディングス、ZETA、フコク、綜合警備保障、ダイワ通信です。
市場内訳
- 東証プライム:12社(うち名証プレミアにも上場している企業1社)(23.1%)
- 東証スタンダード:24社(46.2%)
- 東証グロース:16社(30.8%)
なお、2025年12月26日現在の東証各市場の企業数は以下のとおりです。(カッコ内はTOKYO PRO Market以外の東証上場企業のうち各市場が占める割合)
- 東証プライム:1,599社(42.3%)
- 東証スタンダード:1,568社(41.4%)
- 東証グロース:616社(16.3%)
- TOKYO PRO Market:163社
- 合計:3,946社
TOKYO PRO Market以外の東証上場企業の各市場割合と比べて、内部統制の重要な不備の開示を行ったスタンダート企業とグロース企業の割合が高くなっています。
ここから、中小規模の上場企業における管理体制やリソースの制約、またはグロース企業の急成長企業における管理体制の整備状況が事業拡大のスピードに追いついていないことが考えられます。
月別の開示状況
- 1月:7社
- 2月:7社
- 3月:8社(うち2月にも開示している企業1社)
- 4月:2社
- 5月:4社(うち1月にも開示している企業1社)
- 6月:11社(うち2月にも開示している企業2社、5月にも開示している企業1社)
- 7月:2社(うち2月にも開示している企業1社)
- 8月:6社
- 9月:6社(うち同月に2度開示している企業1社)
- 10月:3社(うち2月にも開示している企業1社)
- 11月:1社
- 12月:3社
6月が11社と最多となっています。これは、3月決算企業の内部統制報告書の提出期限が6月末であることが影響しています。
開示パターン別
開示内容には以下の4つの形態がありました。
- 「内部統制の開示すべき重要な不備」のみ開示:26件
- 「内部統制報告書の訂正報告書」のみ開示:10件
- 「内部統制の開示すべき重要な不備」と「内部統制報告書の訂正報告書」を2文書に分けて開示:9件
- 「内部統制開示すべき重要な不備」と「内部統制報告書の訂正報告書」を1文書に一体化して開示:15件
過去の内部統制報告書の訂正を開示した件数は34件あり、長期間内部統制の不備が見過ごされていたことが見て取れます。
なお、「内部統制の開示すべき重要な不備」と「内部統制報告書の訂正報告書」の同時開示について、1文書にまとめて開示した事例は、2024年には3件しか見当たりませんでしたので、もしかしたら最近現れた開示傾向なのかもしれません。
※2024年において2文書に分けての開示は22件(ukak調べ)ありました。
不備の類型別分析
内部統制の開示すべき重要な不備の開示内容から、6つの基本的要素(統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応)に基づいて分類してみました。2025年の事例では、特に「統制環境」と「統制活動」に関連する不備が多く見られました。
統制環境の不備
【なぜ統制環境が最も重要なのか】
統制環境は他の5つの基本的要素(リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応)の「基盤」として位置づけられています。これは、統制環境が健全でなければ、他のいかなる統制も有効に機能しないことを意味します。
統制環境が最も重要である理由は以下の3点に集約されます。
1.「トーン・アット・ザ・トップ」の影響力
経営トップの倫理観・誠実性・コンプライアンスへの姿勢は、組織全体の行動規範を決定します。経営者が不正を容認すれば、従業員も「上がやっているのだから」と不正を正当化しやすくなります。
2.他の統制の実効性を左右
いかに精緻な統制活動やモニタリング体制を構築しても、経営者がそれを無効化(オーバーライド)すれば意味がありません。2025年の事例でも、経営者による統制の無効化が多数発生しました。
3.組織文化・人材への波及効果
統制環境は、組織構造、権限と責任の付与、人事方針、能力開発への取組みを包含します。これらが適切に機能しなければ、専門知識を持つ人材の確保・育成ができず、結果として組織全体の統制能力が低下します。
以下、2025年の具体的な事例を見ていきます。
経営者による統制の無効化
代表取締役が自ら不正に関与し、内部統制を無効化するケースが複数発生しました。経営者への権限集中とコンプライアンス意識の欠如が共通の特徴です。
- アクアライン:代表取締役主導の不適切な資金移動、売上高・貸倒引当金の虚偽表示
- ダイワ通信:会計コンプライアンスのオーバーライド容認、マネジメントによる不適切な業績プレッシャー
- トーシンHD:会長の影響力と結果重視の企業風土、5期にわたる訂正(キャッシュバック未計上232百万円)
- ANAP HD:元社長の強引な意思決定、TLC事業譲受資産の減損損失約36億円
人材不足・能力不足
経理部門の人員不足や専門知識を持つ人材の欠如も深刻な問題です。特に担当者の退職後の引継ぎ不備が不正発見の遅れにつながるケースが目立ちました。
- ウェルディッシュ:管理担当執行役員の職責放棄と引継ぎ放棄、決算遅延
- ニチリョク:経理担当者退職により内部統制体制の構築が不能に
- 河西工業:経理担当者の大量退職、3期連続の不備報告
統制活動の不備
職務分掌の欠如
自己承認が可能な状態や、相互牽制機能が働かない組織体制は不正の温床となります。
- 河西工業:新ERP導入時に自己承認実行可能な設計となっていた
- アドバンスクリエイト:システム上で自己承認禁止機能が欠如
- フコク上海子会社:小切手による預金引出しを単独で実行可能、出納・記帳を長期間同一人物に委任
決裁プロセスの形骸化
承認プロセスが形式的な確認に留まり、実質的な審査が行われていないケースです。
- ナ・デックス:循環取引・架空取引を長期間発見できず(預け在庫1億円超)、決裁が形式的確認に留まる
リスク評価と対応の不備
新規事業やM&A、海外展開など、事業環境の変化に対するリスク評価が不十分なケースが目立ちました。
- イオンフィナンシャルサービス:PTF買収時の海外企業リスク認識が不十分、のれん等の訂正
- 日本製麻:M&A検討体制の未整備、社内規定の欠如
- 京都機械工具:子会社の不正リスク評価が不適切、仕掛品等の過大計上
モニタリングの不備
内部監査機能の不全
内部監査部門の人員不足、専門性不足、監査範囲の不適切さが問題となりました。
- 旅工房:内部監査が機能せず、雇調金不正受給・GoTo給付金不適切申請を長期間看過
- HIS:内部監査部門の人員不足、子会社における雇調金不正・不適正受給
異常値検知の失敗
長期間にわたる不正行為を発見できなかったケースも多く見られます。
- フコク:2019年から継続した子会社での着服行為を発見できず
- サンウェルズ:2019年から継続した不適切な請求を発見できず
情報と伝達の不備
部門間の情報連携不足や、内部通報制度の機能不全が問題となりました。
- 魚力:退店情報が経理部門に伝達されず、資産除去債務・減損処理が遅延
- 日精樹脂:為替レート適用に関する部門間連携が不足
- 創建エース:内部通報制度が適切に機能せず
ITへの対応の不備
新システム導入時の検証不足やIT統制の設計ミスが複数の事例で確認されました。
- 河西工業:新ERP導入時のフィット&ギャップ分析不足、レポート機能不足で手作業発生
- キーコーヒー:新基幹システムでの在庫単価・諸掛費の検証不十分
- ツインバード:原価計算機能の検証不十分、システムテスト工程の不備
不備の原因パターン別分析
2025年の事例を分析すると、不備の根本原因は大きく3つのパターンに分類できます。
- 経営層起因:経営者不正、権限集中、コンプライアンス軽視
- 組織・体制起因:人員不足、専門知識不足、子会社管理不足
- プロセス起因:マニュアル・手順書不備、システム不備、検証体制不足
経営層起因
経営者自身が不正に関与するケースや、特定の役員への過度な権限集中が原因となるパターンです。「トーン・アット・ザ・トップ」の欠如が組織全体に悪影響を及ぼしています。
- ピクセルカンパニーズ:前社長による資金流出、子会社を通じた取引仮装
- ジェイ・エス・ビー:特定取締役への権限集中、相互監視機能の不全
- ANAP HD:元社長の強引な意思決定が減損損失約36億円に
組織・体制起因
人材面や組織構造上の問題が根本原因となっています。特に経理部門の人員不足と専門知識の欠如が深刻です。
- ZETA:収益認識会計基準の理解不足、社内体制の整備遅れ
- クシム:暗号資産評価に関する専門性不足、経理部門の脆弱性
- ニデック:海外子会社からの情報収集が困難
- ツルハHD:子会社の契約書管理が不適切
プロセス起因
業務プロセスやシステムの設計・運用上の問題が原因となるパターンです。特に新システム導入時の検証不足が目立ちます。
- 木徳神糧:棚卸資産に関する業務手順書の不備
- 河西工業:ERPレポート機能不足により手作業が発生
- 倉元製作所:ソフトウェア開発費の資産計上に関する検証体制不足
是正措置の傾向分析
財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備を報告した企業は、その是正に向けた取り組みを行っています。2025年の事例から見える是正措置の傾向を分析します。
ガバナンス強化(ほぼ全件で実施)
経営層起因の不備が多いことを反映し、ガバナンス体制の抜本的な見直しが最優先で行われています。
- 経営陣の刷新:ANAP HD(取締役・監査役刷新)、旅工房(外部から代表取締役招聘)
- 社外取締役の増員:エルアイイーエイチでは監査法人出身者を常勤配置
- 委員会の設置・強化:サンテック(内部統制強化委員会)、MTG(リスク・コンプライアンス委員会機能強化)
人員・体制強化
- 経理部門の増員:魚力(CFO・経理部門長を外部招聘)、アドバンスクリエイト(公認会計士等の採用)
- 内部監査の強化:HIS(内部監査室人員増強)、アビスト(監査室人員拡充)
システム・IT対応
- システム改修:河西工業(ERPレポート機能開発)、キーコーヒー(データ入力検証機能追加)
- 電子記録の導入:サンウェルズ(訪問看護時間の電子記録制度)、コレックHD(引渡確認書の電子記録)
規程・マニュアル整備
- 業務手順書の作成:木徳神糧(棚卸資産関連マニュアル整備)
- 会計基準適用指針の整備:ZETA(収益認識に関する実務指針整備)、横浜冷凍(債権評価マニュアル詳細化)
教育・研修
コンプライアンス研修の全社的な継続実施に加え、会計基準・労務管理・助成金制度等の専門知識研修が行われています。
外部専門家の活用
会計アドバイザーの選任(例:サンテックはOAG監査法人を選任)や、弁護士・コンサルタントによる再発防止策策定支援が行われています。
まとめ
2025年の内部統制不備の開示事例は、内部統制の整備・運用に対する以下の重要な考えを示しています。
根本原因への対処の重要性
統制環境、特に経営者の姿勢と人材不足が根本原因となるケースが最も多く見られました。表面的なプロセス改善だけでなく、企業文化や組織体制の見直しが不可欠です。
変化への対応力の強化
新規事業、M&A、海外子会社、新システム導入といった「変化」への対応不足が顕著でした。変化に伴うリスク評価プロセスの強化が求められます。
影響領域の傾向
2025年の内部統制不備の開示事例では、収益認識と関係会社管理が最も影響を受けた領域でした。特に複雑な取引スキーム、子会社統制、新会計基準適用時の検証体制強化が重要です。
継続的モニタリングの必要性
是正措置はガバナンス強化・人員増強・規程整備が中心ですが、その実効性を確保するには継続的なモニタリングが不可欠です。河西工業のように3期連続で不備を報告するケースは、一度の是正措置だけでは不十分であることを示しています。
金額的影響の大きさ
一部の事例では極めて大きな財務的影響が発生しています。横浜冷凍では貸倒引当金6,421百万円、投資有価証券評価損2,604百万円、債務保証損失引当金4,487百万円を計上。ANAP HDでは減損損失が合計約36億円に達しました。
内部統制の不備は、企業価値に直接的かつ重大な影響を与えることを改めて認識する必要があります。
おわりに
内部統制は企業の持続的成長の基盤です。このブログ記事で分析した2025年の内部統制不備の開示事例は、他山の石として、すべての上場企業にとって貴重な学びの機会となります。
経営者のリーダーシップのもと、実効性のある内部統制体制を構築・維持することが、企業価値の向上につながることを改めて認識したいと思います。
Appendix:2025年内部統制不備の各開示事例における主な不備内容とその原因
1月
株式会社アビスト:東証スタンダード/サービス業
不備内容:雇用調整助成金の不正受給・不適切申請
主な原因:制度理解不足、申請ルール・責任体制の不備、コンプライアンス意識の鈍麻
横浜冷凍株式会社:東証プライム/卸売業
不備内容:海外取引先向け債権の区分・引当金計上誤り、金融取引の収益認識誤り
主な原因:決算マニュアルの規定不足、専門知識を有する要員不足
株式会社MIXI:東証プライム/情報・通信
不備内容:子会社役職員が取引先と不適切な資金やり取り
主な原因:監査役が会計限定で業務監査なし、取締役・監査役相互のモニタリング不全
株式会社アクアライン:東証グロース/サービス業
不備内容:社長主導の資金移動取引、売上高・貸倒引当金の虚偽表示
主な原因:経営者による内部統制の無効化、取締役会・監査役会の機能不全
株式会社サンテック:東証スタンダード/建設業
不備内容:トンネル工事の損益期間帰属誤り、共用資産減損判定の評価プロセス不備
主な原因:管理難易度高い工事に必要人材未配置、減損の認識意識・会計基準理解不足
株式会社ジェイ・エス・ビー:東証プライム/不動産業
不備内容:取締役家族の旅費を会社負担(計19百万円)、簿外資産(金券13百万円、ワイン32百万円)
主な原因:経費稟議の決裁基準が無効化、取締役に広範な経費使用裁量
株式会社イメージワン:東証スタンダード/卸売業
不備内容:減損損失の計上時期不適切、敷金・仕掛販売用不動産の評価損計上遅延
主な原因:元取締役らの意向で内部統制が未機能、代表取締役への権限集中
2月
株式会社サンウェルズ:東証プライム/サービス業
不備内容:訪問看護の短時間訪問を30分として請求、同行者不在を同行ありとして請求
主な原因:単価目標が人事評価に組込み不適切請求を誘発、教育・研修不足
工藤建設株式会社:東証スタンダード/建設業
不備内容:工事原価の過少計上、工事間での原価付替え
主な原因:建設事業部長と部下のコミュニケーション不足、システムで自己承認可能
株式会社ナ・デックス:東証スタンダード/卸売業
不備内容:元業務委託社員による不正領得、循環取引、架空発注の付替え
主な原因:受注承認時の書類確認不足、決裁処理が形式的で取引実態把握できず
株式会社トーシンホールディングス:東証スタンダード/情報・通信
不備内容:キャッシュバック費用の未計上、代理店精算の会計処理誤り
主な原因:会長の影響力と結果重視の企業風土、コンプライアンス意識の不足、ガバナンス機能不全
ZETA株式会社:東証グロース/サービス業
不備内容:収益認識会計処理の不備、履行義務の充足の事実を確認する統制未整備
主な原因:適時適切な会計処理の未検討、ライセンス取引の性質に対応した内部統制・社内体制の不正備
株式会社フコク:東証プライム/ゴム製品
不備内容:上海子会社での従業員による資金着服、虚偽帳票での偽装
主な原因:単独で小切手引き出し可能、出納・記帳事務の長期固定化、子会社ガバナンス形骸化
株式会社アドバンスクリエイト:東証プライム/保険業
不備内容:PV計算(将来手数料の割引現在価値)の見積誤り、子会社売上計上誤り
主な原因:管理会計PV額へのプレッシャー、担当者交代と引継ぎ不備
3月
株式会社MTG:東証グロース/その他製品
不備内容:子会社での広告仕入計上文書改ざん、費用計上年度ずれ・未計上
主な原因:元代表者による統制無効化、リスク分析不十分でJ-SOXスコープ外
株式会社倉元製作所:東証スタンダード/ガラス・土石製品
不備内容:子会社でソフトウェア開発費を資産計上すべきところ費用計上
主な原因:良品稼働条件付きで開発未了、自社利用外部購入ソフトの処理誤り
木徳神糧株式会社:東証スタンダード/卸売業
不備内容:棚卸資産の在庫金額誤り、売上原価過少計上
主な原因:業務手順書・マニュアル未整備、チェック体制の未機能、異常値捕捉の分析不足
株式会社ツルハホールディングス:東証プライム/小売業
不備内容:店舗賃貸借契約の会計処理誤り、リース注記の訂正必要
主な原因:賃貸借契約書の管理不備、経理部と店舗開発部の情報収集指示不明確
オイシックス・ラ・大地株式会社:東証プライム/小売業
不備内容:子会社での棚卸資産過大計上(2014年以降)、実地棚卸結果の改竄
主な原因:事業部別残高がモニタリング対象外、職務分掌の未運用
株式会社エイチ・アイ・エス:東証プライム/サービス業
不備内容:雇用調整助成金の不正受給及び不適正受給、GoToトラベル事業給付金申請に関する不適切な会計処理
主な原因:制度の理解不足、助成金申請に対応する労務管理の不備、監査体制の甘さ、通報体制の機能不全、リスク・コンプライアンス委員会によるリスクの不十分な検討・分析
ピクセルカンパニーズ株式会社:東証スタンダード/卸売業
不備内容:前社長による子会社資金の仮装流出、借入返済への私的流用
主な原因:全社的内部統制・決算報告プロセスの重要な不備
ZETA株式会社
※2月参照
4月
株式会社クシム:東証スタンダード/情報・通信
不備内容:暗号資産評価の会計処理の妥当性に指摘
主な原因:専門的検証・確認不足、経理部門の体制不備、モニタリング機能不十分
株式会社日本抵抗器製作所:東証スタンダード/電気機器
不備内容:子会社での元従業員による資金私的流用、虚偽仕訳計上
主な原因:出金承認プロセスの運用不備
5月
綜合警備保障株式会社:東証プライム/サービス業
不備内容:退職給付債務のデータ入力誤り
主な原因:決算・財務報告プロセスの内部統制不備
株式会社サイバーエージェント :東証プライム/サービス業
不備内容:子会社取締役による売上見積係数の改竄(長期)
主な原因:事業責任者と経営管理責任者の兼務、見積根拠のチェック体制不備
株式会社ツインバード:東証スタンダード/電気機器
不備内容:新基幹システムの在庫単価・諸掛費検証不足、原価計算機能の不具合
主な原因:システムテスト工程の不備、重要担当者退職と引継ぎ不足
株式会社アクアライン
※1月参照
6月
アライドアーキテクツ株式会社:東証グロース/サービス業
不備内容:売上の前倒計上や架空計上等の不適切な会計処理
主な原因:部門責任者が販売管理システムにおける担当案件手続を自ら申請のうえ自ら承認
綜合警備保障株式会社
※5月参照
株式会社フコク
※2月参照
株式会社サンウェルズ
※2月参照
日本製麻株式会社:東証スタンダード/卸売業
不備内容:M&A案件検討過程での会計監査人から統制環境醸成やルール未整備の指摘
主な原因:M&A案件におけるリスク評価体制・社内規程の未整備
GFA株式会社:東証スタンダード/その他金融業
不備内容:債権譲渡収益の認識基準不充足、暗号資産の評価手法・区分誤り
主な原因:会計処理の理解不足、資料確認漏れ
株式会社ニチリョク:東証スタンダード/小売業
不備内容:会計見積もりの補完統制未運用、決算・監査スケジュール遅延
主な原因:経理担当者退職による人的リソース不足、引継ぎ・人員補充が間に合わず
日精樹脂工業株式会社:東証プライム・名証プレミア/機械
不備内容:未実現利益算定の為替レート適用誤り、海外子会社との債権債務消込不備
主な原因:為替レート適用のモニタリング不足、担当者間の引継ぎ不備
昭和ホールディングス株式会社:東証スタンダード/ゴム製品
不備内容:関連会社元役員による貸付債権等に関する不正行為や利息収入の過大計上
主な原因:情報源の特定困難性、タイ法務省特別捜査局による捜査手続きの継続、関連会社の会計監査人監査の継続
株式会社エルアイイーエイチ:東証スタンダード/小売業
不備内容:前代表取締役の無承認支出、新規子会社の内部統制未構築
主な原因:取締役会・監査等委員会の役割に問題、人員不足
株式会社ACCESS:東証プライム/情報・通信
不備内容:米国子会社での売上前倒・架空計上、ソフトウェア過大計上
主な原因:CFOが内部統制を無効化、収益認識ルールの不備、日本グループ意識の欠如
7月
株式会社ナ・デックス
※2月参照
イオンフィナンシャルサービス株式会社:東証プライム/その他金融業
不備内容;買収した海外子会社の不適切会計処理が判明
主な原因:海外M&Aリスク認識不足、PMI過程での分析・精査不足
8月
株式会社創建エース:東証スタンダード/建設業
不備内容:子会社と特定取引先との架空売上、経済実態を反映しない売上計上
主な原因:取引内容・工事進捗の確認体制不備、日常モニタリング・内部監査の機能不全
株式会社フィスコ:東証グロース/情報・通信
不備内容:暗号資産フィスココインの評価に関する会計処理誤り
主な原因:評価ルールの未策定、価格変動時の妥当性判断不足
キーコーヒー株式会社:東証プライム/食料品
不備内容:新基幹システムで在庫金額過大計上、積送中在庫の二重計上
主な原因:システム受入検証手続の不備、カスタマイズプログラムの設計問題
株式会社メディカルネット:東証グロース/情報・通信
不備内容:子会社の連結除外処理の遅延、決算数値の確認・承認手続き不十分
主な原因:会計基準の理解不足、外部専門家への相談不足、手順書の未整備
株式会社コレックホールディングス:東証スタンダード/サービス業
不備内容:売上の期間帰属誤り(遅延計上)
主な原因:収益認識会計方針の理解不足、証憑に履行義務充足時点の記載なし
株式会社魚力:東証プライム/小売業
不備内容:子会社の減損処理漏れ、資産除去債務の計上漏れ、法人税の過少計上
主な原因:経理部門長への業務集中、他部門・子会社との連携不足
9月
ダイワ通信株式会社:東証スタンダード/卸売業 ※当月2度開示
不備内容:子会社での売上過大計上・簿外在庫、関連当事者取引の注記漏れ
主な原因:会計コンプライアンス意識の欠如、代表取締役による利益相反取引のガバナンス不全
京都機械工具株式会社:東証スタンダード/金属製品
不備内容:子会社での仕掛品過大計上、経営層関与の疑義、監査等委員の不適切対応
主な原因:月次黒字達成へのプレッシャー、在庫管理システムの手作業依存、改ざんが容易な体制
ニデック株式会社:東証プライム/電気機器
不備内容:イタリア子会社の原産国申告誤り、未払関税の発生
主な原因:リスク情報の報告ルート不備、連結決算への反映遅延
株式会社Birdman:東証グロース/サービス業
不備内容:継続企業の前提に関する事業・資金計画未作成、資金繰りの不透明化
主な原因:継続企業の検討の重要性認識不足、人材不足による体制不備
Solvvy株式会社:東証グロース/その他金融業
不備内容:修理費用立替金の回収可能性把握プロセス不備
主な原因:保険金支払限度額管理の重要性認識不足、リスク対応の内部統制未構築
10月
河西工業株式会社:東証スタンダード/輸送用機器
不備内容:メキシコ子会社での買掛金計上誤り(3期連続)、新ERPシステム導入時の不具合
主な原因:システムの補助元帳機能不足、担当者交代時の引継ぎ不備
株式会社旅工房:東証グロース/サービス業
不備内容:雇用調整助成金の不正受給、GoToトラベル給付金の不適切な資金循環、ソフトウェア過大計上
主な原因:代表取締役が不正を発案・容認、取締役会の監督機能不全、内部通報制度の機能不全
株式会社トーシンホールディングス
※2月参照
11月
イシン株式会社:東証グロース/サービス業
不備内容:投資有価証券の評価方法の誤り、決算期ずれに伴う調整処理の誤り
主な原因:会計基準の理解不足、外部委託先との連携不足
12月
株式会社ANAPホールディングス:東証スタンダード/小売業
不備内容:前経営陣のコンプライアンス意識欠如、取締役会の相互牽制機能不全、減損処理手順の未整備
主な原因:元社長主導の強引な意思決定、監査役監査の機能不全
株式会社ウェルディッシュ:東証スタンダード/食料品
不備内容:経理・決算業務の人材不足、決算作業の遅延
主な原因:管理担当役員が資料未提出のまま退職、業務引継ぎの放棄
株式会社ウェッジホールディングス:東証グロース/その他金融業
不備内容:タイ関連会社への投資評価に関する管理体制不備、海外関連会社の情報収集体制の不十分
主な原因:タイ当局調査中で情報入手困難、融資取引の根拠特定ができていない

