【東京産業】太陽光事業のリスク認識の甘さが招いた決算迷走

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第三者委員会等調査報告書の要約

 東京産業株式会社は、A市の太陽光発電案件に関して、A社との契約解約に基づき有することとなった債権につき、B社から担保を受けていました。しかし、2023年6月にB社が担保資産の一部を無断で譲渡した事実を同年9月に把握しました。会計監査人からは、この事実が事後判明事実に該当し、債権の回収可能性評価や決算修正の必要性を検討すべきとの指摘を受けました。

 さらに、B社が担当するB市の太陽光発電案件についても、設備IDや発電事業者の地位に関する調査・検討が必要だと指摘され、東京産業株式会社は2023年11月に外部調査委員会を設置し、専門家による調査を実施することを決定しました。

 また、この調査の終盤に、東京産業株式会社がN村で受注している太陽光発電案件における多額の追加費用の発生に関して、会計監査人から過去の会計処理の適切性に疑問が呈されました。これを受け、2024年1月15日に外部調査委員会に追加調査が委嘱されました。

 この記事では、同社が公表した外部調査委員会の中間および最終調査報告書に記載されている不祥事の内容、発生原因に焦点を当てて要約しています。

※詳細は東京産業株式会社外部調査委員会「中間調査報告書」および「最終調査報告書」(PDF)をご確認ください。

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東京産業の概要

資本金:34億4328万4858円
従業員数:311名(当社単体)358名(連結)
企業グループ構成:東京産業、子会社17社、関連会社4社、関連当事者1社
事業内容:電力事業、環境・化学・機械事業、生活産業事業に分かれ、国内及び海外における各種機械・プラント・資材・工具・薬品等の販売、メンテナンス、サービス等

 調査対象となった太陽光発電事業の具体的内容は以下のとおりです。

  1. 自社で太陽光発電設備を保有し、電力会社に売電する
  2. 太陽光発電設備の設計・調達・建設(以下「EPC」という。)にかかる契約を締結し、太陽光発電設備の設計、調達及び建設を請け負う
  3. ID等(※)の売買を仲介する
  4. ID等(※)の売買を行う
  5. 匿名組合への投資

※「ID等」とは、太陽光発電設備の設備認定において割り当てられた設備ID及び当該設備認定上の発電事業者の地位並びに発電設備に関する電力会社を相手方とする一切の権利及び地位の総称を指します。

調査対象の内容

A案件について

A案件における未収入金発生

 2018年4月3日、東京産業はA案件ID等譲受契約を締結し、A社からA案件ID等を購入。次いでC社との間でA案件ID等譲渡契約を締結し、C社に売却しました。

 B社は、A案件ID等譲受契約がもし解除された場合に、A社が当社に対して負う返還債務を連帯保証する保証書を差し入れました。なぜなら、A社はA案件ID等をB社から購入しており、東京産業がA社に支払った代金の大部分がB社に支払われており、A社に返還余力がないためです。

 2020年3月26日、東京産業とC社との間で、A案件ID等譲渡契約を合意解約する旨の同月31日付の合意書が締結されたため、C社に対する返還債務が発生しました。

 2020年3月31日、東京産業はA社およびB社との間で、A案件ID等譲受契約を合意解約すること、東京産業がA案件ID等譲受契約に基づきA社に対して支払った代金をA社が分割払いの方法で返還すること(A案件未収入金)、および当該返還債務をB社が連帯保証すること等を内容とするA案件ID等譲受合意解約書を締結しました。

担保設定

 2020年3月31日、A案件ID等譲受合意解約書に基づいて発生したA案件未収入金を保全するため、B社およびA社に対して担保の提供を求め、担保資産の提供を受けました。

 2020年11月17日、東京産業はB社との間でB01案件ID等を購入する旨のB01案件ID等譲受契約を締結しました。

 2020年11月27日、東京産業はB社およびA社との間で、新たなスケジュールでA案件未収入金を返還することに合意し、A案件未収入金公正証書が作成されました。

 2020年11月30日、B01案件ID等の購入に伴い、東京産業はB社との間で、A案件未収入金と東京産業がB社に対し負うことになる債務を対当額で相殺(A案件相殺)しました。また、東京産業はB社との間で、A案件抵当権設定契約、A案件合同会社持分質権設定契約および債権譲渡担保設定契約を締結し、東京産業が取得した担保およびその評価額が確定しました。

B社による担保資産一部売却および東京産業の対応

 B社は2022年9月にG社と「本件■■■売却」の交渉を開始しました。G社はB社が保有する複数の太陽光発電案件(「本件■■■対象案件」)の購入意向を示し、B社はこれを受け入れました。2022年10月13日、B社とG社は「売渡に関する覚書」を締結しました。

 また、2023年4月17日、B社がI社の保有するID等と事業用地の地上権をJ社に移転していた事実(「本件■■■資産譲渡」)が発覚しました。これにより、B社は2023年5月26日に東京産業へ本件詫び状と本件譲渡予定書面を提出しました。

 2023年6月23日、B社はL社との間で不動産売買契約および持分譲渡契約を締結し、担保資産一部売却を実行しました。これには担保資産である①H案件の事業用地の所有地、②H03案件のM社の持分、③J案件のN社の持分が含まれていました。

 これらの件について、東京産業側の認識と対応は以下のとおりです。

  1. 2022年10月から2023年3月にかけて、B社から「本件■■■売却」に関する報告を受けていた
  2. 2023年3月17日、B社から「本件■■■対象案件」の売却スケジュールの提示を受けたが、B社は売却対象の担保資産の評価額相当額の返還が困難であると述べていた
  3. 2023年4月17日に「本件■■■資産譲渡」を認識し、J社の持分に対する質権設定で対応した
  4. 2023年5月12日の取締役会で「本件■■■資産譲渡」の事実と担保不足額が報告され、B社への対応が議論された
  5. 2023年5月26日、B社から本件詫び状を取得した
  6. 2023年5月30日、B社に対し、本件譲渡予定は受け入れられないことを伝えた
  7. 2023年6月に入ってもB社からの情報提供はなく、「本件■■■売却」の進行状況を確認できなかった
  8. 2023年7月25日、B社から担保資産の売却は9月から実施予定との報告を受けたが、実際には6月23日に既に担保資産一部売却が行われていた
担保資産一部売却発覚以降の東京産業の対応

 東京産業の担当者は2023年9月末の2024年3月期第2四半期決算の関係で、担保資産に関する情報整理の必要性から、2023年9月20日にB社に新しい事象の有無を確認しました。

 B社からの面談要請を受け、2023年9月22日に面談を実施し、この時点で初めて担保資産一部売却の事実を認識しました。担当者は、B社に対して詳細な事実確認のため、2023年9月26日に再度面談を行いました。この面談で、担当者はB社に以下の点を伝えました。

  • 担保資産一部売却により担保割れの状態にあり、大変遺憾であること
  • 本件詫び状記載の内容に反していること
  • 担保割れ状況解消のため、新たな担保が必要であること
  • 現金での返還が必要であること

 さらに、2023年9月28日の面談では、東京産業の担当者はB社に以下の要請をしました。

  • 抵当権設定済のC01案件及びH案件の事業用地に関して現金を返還すること
  • G社からB社への担保資産一部売却の代金の入金スケジュールをG社およびK社に直接確認するため、G社およびK社との面談を実施すること

 その後、2023年10月3日、B社より担保資産一部売却に関するB社とL社との間で締結された契約書の開示を受け、初めて売却の具体的な内容を知りました。

 東京産業は2023年10月10日に会計監査人に第一報を入れ、同月19日に詳細説明を行いました。その結果、10月31日に会計監査人より、A案件未収入金の回収可能性の評価等について、決算修正の必要性を含め検討する必要があること等の指摘を受けました。

B01案件について

 B01案件に関する経緯は以下のとおりです。

  1. 2019年11月29日、B社から東京産業に対してB01案件に関する資金援助の依頼があった
  2. 2020年1月31日、取締役会でB社に対する貸付が承認された
  3. 2020年2月12日、B社と金銭消費貸借契約を締結し、貸付を実行。同時に、担保としてD案件、C01案件、B01案件の事業用地に対する抵当権を設定した
  4. 2020年3月31日、A案件ID等代金返還請求権を担保するために、Q社とB01案件IDについて売買予約契約を締結した
  5. 2020年11月17日、B社からB01案件ID等を購入した
  6. 2020年11月24日、B社から、B01案件の事業用地に対する地上権の設定を受けた

 2022年9月以降、B社はG社との間でB01案件の売却に関する交渉を開始しました。最終的に、2023年12月26日、東京産業とS社(G社の特別目的会社)は、東京産業がS社に対し、B01案件ID及びB01案件の事業用地の地上権を売却する旨の契約を締結しました。

 B01案件の事業性及び事業実現可能性については主に以下の点が確認されています。

  • FIT認定失効の可能性は低いと考えられた(FIT認定:再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定める価格で一定期間、電気事業者が買い取ることを義務付ける制度)
  • 林地開発許可は取得済み
  • 環境アセスメントは進行中で、2025年2月頃に完了する見込み

 これらの状況から、B01案件の事業性と実現可能性については、一定の課題はあるものの、概ね前向きな見通しが立っていると考えられます。

A案件未収入金計上以降の決算処理の状況

 以下の点から、東京産業の担保管理・評価および決算処理には改善の余地があり、より慎重な対応が必要だったことが指摘されています。

担保管理・評価のための情報収集

 担保管理・評価のための情報収集は、法務審査部が主体となって行っていました。担保取得時に不動産登記や法人登記を取得し、担保評価時に地代収入や先順位担保の被担保債権額を確認していました。

 しかし、担保資産一部売却までは、担保評価時に不動産登記や法人登記の再取得は行っていませんでした。また、先順位担保の被担保債権額の把握は、担保設定者へのヒアリングに依存しており、決算書との比較等は行っていませんでした。

担保評価の方法

 2020年11月30日から2022年12月31日までは法務審査部が、2023年1月以降は経理部が担保リストを作成していました。2023年3月期年度決算では、質権の担保評価について第三者機関による外部評価を取得しました。

各決算処理において慎重な対応が必要であった事実等

 2020年3月期年度決算から2023年3月期第3四半期までの決算処理では、訂正等を要する事項は検出されませんでした。しかし、2023年3月期年度決算および2024年3月期第1四半期において、以下の点でより慎重な評価・対応が必要でした。

担保資産一部売却の事実等

 B社から「本件■■■対象案件」の売却スケジュールの提示を受けていましたが、B社は返還が困難と述べていました。また、「本件■■■資産譲渡」の発覚後も、担保資産一部売却を事前に把握できませんでした。

 2023年7月10日には担保資産一部売却に伴う所有権移転登記が完了しており、2024年3月期第1四半期の決算処理中に把握できた可能性がありました。

C社のD案件の地代の不払いに伴う担保評価の見直しの必要性:

 C社が地代支払いを停止した際、一部の案件で担保評価の見直しを行いましたが、D市の土地についてはそれを行いませんでした。C社の地代支払い停止の背景を踏まえると、D市の土地を対象とする抵当権についても、より慎重な評価を行うべきでした。

追加調査となったN 案件について

 N案件は、東京産業が元請として受注した■■県■■■N村における太陽光発電案件です。

 N案件の入札に至る経緯として、Z1社がQ案件で工期短縮を実現したことがR社に評価され、N案件でもZ1社と東京産業の関与が要請されました。N案件は第一期工事と第二期工事に分かれており、それぞれZ2社とZ3社が施主でした。

 入札時、東京産業はZ1社の提示した見積金額をそのまま使用し、工事内容や契約金額の妥当性について専門的な検証を行いませんでした。また、追加費用が発生してもZ1社から請求されることは想定していませんでした。

 2020年5月12日、東京産業はZ2社およびZ3社とEPC請負契約を、Z1社とEPC発注契約を締結しました(EPCとは、E=設計(Engineering)、P=調達(Procurement)、C=建設(Construction)の頭文字をとった略称で、工場や太陽光発電所などの設計・調達・建設を一貫した形で請け負う契約を指します)。

 工事の進捗において、N案件開発行為変更や開拓財産の工事に関する折衝に時間を要したこと、第二期工事の系統連系が遅れたことなどから、工事に遅れが生じました。

 2022年頃から、Z1社はR社側に対してN案件追加費用の交渉を開始しました。当初Z1社が直接交渉していましたが、2022年8月頃から東京産業も関与するようになりました。

 2022年9月、東京産業はZ1社の要請に応じて前渡金を支払いました。当初はこれをN案件追加費用の一部として支払う予定でしたが、R社側から具体的な金額を明記した文書を受領できる見込みがなくなったため、前渡金として支払うことにしました。

 R社側との交渉は難航し、2023年6月にようやくR社側がある一定の金額を超えない範囲でN案件追加費用を支払うことが合意されました。2023年12月には、R社側と東京産業の間で、N案件追加費用の具体的な金額について覚書が締結されました。

 一方、Z1社の資金繰りは悪化し、2023年9月頃から下請協力業者への支払遅延が発生しました。2023年11月には、Z1社がN案件第二期工事を継続することが困難であることが判明し、東京産業は新たな下請協力業者を探すことになりました。

 2024年3月19日時点で、東京産業はZ1社との間で、N案件第二期EPC発注契約の合意解除に伴う損害賠償金額を合意する見込みとなっています。

 これらの経緯から、N案件における追加費用の発生や工事の遅延、Z1社の資金繰り悪化などの問題が明らかになりました。当社のリスク管理や会計処理に関する課題も浮き彫りになり、今後の改善が必要とされています。

案件にかかる各年度における会計処理について

2021年3月期

 東京産業は工事進行基準を適用し、R社側からの受注額を工事収益総額、Z1社への発注額とその他原価の見積額を工事原価総額として会計処理を行いました。N案件追加費用の発生可能性は認識されておらず、Z1社の会計記録でも工事原価総額の見直しは行われていませんでした。前受金・前渡金の支払いは契約条件に沿って行われていました。

2022年3月期

 新収益認識基準を適用し、実質的に工事進行基準と同等の会計処理を継続しました。N案件追加費用の発生可能性は認識されていましたが、経理には情報が共有されず、会計処理に反映されませんでした。モジュールの進捗率計算に問題があり、売上高と売上原価が過大に計上されました。Z1社への前渡金支払いが契約条件を超えて行われ始めました。

2023年3月期

 N案件追加費用の交渉が本格化し、Z1社の資金繰りも悪化しました。工事進行基準の適用を継続しましたが、第2四半期以降は原価回収基準への切り替えが必要だったと考えられます。モジュールの進捗率問題は継続し、Z1社への条件外前渡しも増加しました。工事損失引当金の計上要否の検討も不十分でした。

2024年3月期(第1四半期から第3四半期)

 N案件追加費用の金額が暫定的に決まりましたが、会計処理への反映は遅れました。Z1社の資金繰り悪化が顕在化し、工事体制の変更が必要になりました。第3四半期で工事損失引当金を計上しました。Z1社への前渡金の評価や科目変更、貸倒引当金の検討が必要な状況となりました。

 全体を通して、N案件追加費用の発生やZ1社の資金繰り悪化に対する会計上の対応が適切でなかったこと、モジュールの進捗率計算の問題、条件外前渡金の増加などが主な問題点として挙げられます。これらの問題により、各期の財務諸表に影響を与えた可能性があります。

問題点と発生原因

A案件に関する問題点

 中間調査報告書に記載された事実関係の経緯からすれば、A案件によって発生した長期未収入金についての管理・検討状況の問題点は、以下のとおりです。

  • 2023年3月期年度決算時、担保資産一部売却について認識がなかった
  • B社からの情報に対して十分慎重な対応を行わなかったことが指摘されている
  • 2024年3月期第1四半期決算時、担保資産の状況に関する情報収集が不十分だった
  • 合同会社の決算情報の把握が十分でなく、「本件■■■資産譲渡」の早期発見機会を逃した

N案件に関する問題点

 最終調査報告書に記載された事実関係の経緯からすれば、N案件におけるN案件追加費用、工事進行基準の適用および前渡金の支払・管理に関する問題点は、以下のとおりです。

  • 2023年3月期第2四半期以降、原価回収基準への切り替えが必要だったが、工事進行基準を継続した
  • 経理部門でのN案件追加費用に関する理解が不十分だった
  • モジュールの進捗率計算に問題があり、不適切な会計処理がなされた
  • Z1社への前渡金の支払・管理に問題があった

発生原因

 これらの問題点の発生原因として、以下の3点が挙げられます。

新たなビジネス形態に取り組む際のマネジメントレベルでのリスク認識の弱さ
  • A案件では、ID名義の移転を行わないリスクの認識が不足していた
  • N案件では、本件スキームのリスクを十分に検討していなかった
会計に影響しうる情報(特に非経常的な状況に関するもの)についての感度・リテラシーが十分でなかったこと
  • A案件では、担保資産の状況確認や情報収集が不十分だった
  • N案件では、追加費用に関する情報の共有や分析が不十分で、会計処理への影響について適切な検討がなされなかった
  • 内部監査や監査等委員からの指摘が適切に活用されなかった
イレギュラーな事象が発生した後の対応策の検討と実行が不十分であったこと
  • A案件では、「本件■■■資産譲渡」発覚後の対応が不十分だった
  • N案件では、追加費用発生やZ1社の資金繰り悪化後の対応が不適切だった

取締役および取締役会の対応と問題点のまとめ

 ここであらためて当案件に関する取締役および取締役会の対応に焦点を当ててまとめてみました。

東京産業の認識と対応

 東京産業は、A案件未収入金の保全のためにB社から担保設定を受けていましたが、B社は承諾なく担保資産の一部を売却しました。2023年9月22日のB社との面談で初めてこの事実が認識されました。

 東京産業は、担保資産一部売却を認識する以前の2023年3月、B社から「本件■■■対象案件」の売却スケジュールについて共有を受けていました。

 担当者は、B社に対し、売却する際には担保権の解除が必要であること、そのためには売却対象の担保資産の評価額相当額の返還が必要であることを伝えていました。

 しかし実際には、B社は、2023年6月23日に担保資産の一部をL社に売却していました。東京産業は、同年9月22日のB社との面談まで、この事実を把握していませんでした。

 担保資産一部売却を認識した後、東京産業はB社に対し、担保割れの状況を解消するため、新たな担保の提供と現金での返還を要求しました。

取締役会における対応

 2023年5月12日に開催された取締役会で、東京産業は、B社が担保資産の一部であるI社の持分をJ社に無断で譲渡していた事実(「本件■■■資産譲渡」)を認識した。

 社外取締役(監査等委員)のa1氏より、B社に対し、理由の説明と謝罪を求め、可能な限りの責任追及を行う必要がある旨が述べられました。

 a1氏は、B社から以降、東京産業が質権を取得している合同会社の資産を無断で譲渡する事を防ぐための措置ができないか、顧問弁護士に確認するよう求めました。

 当時、取締役(監査等委員)であったa2氏も、B社より、理由の説明、謝罪、および以降担保資産を無断で譲渡しないことの確約を書面で取得すべきと述べました。

 2023年5月29日に開催された取締役会では、顧問弁護士から、B社による「本件■■■資産譲渡」を防止するために、B社から念書を徴求すること、および経済産業省のHPや不動産登記簿謄本の記載を定期的に確認することなどが有効であるとの回答がありました。

問題点

 東京産業は、B社から「本件■■■対象案件」の売却スケジュールや担保評価額に見合う返還が難しい旨のコメントを受けていたにもかかわらず、担保資産一部売却を認識するまで、適切な対応を取ることができませんでした。

 東京産業は、B社による「本件■■■資産譲渡」を認識した後も、B社に対して、念書を徴求することや、定期的に経済産業省のHPや不動産登記簿謄本の記載を確認することなどの対応を取っていませんでした。

 取締役会においても、B社への責任追及や再発防止策については議論されたものの、具体的な対応策は決定されず、結果として、担保資産一部売却の発生を防止することができませんでした。

 これらの問題点は、東京産業におけるリスク管理体制の不備を示唆している。特に、非定型的なビジネス取引におけるリスク評価と対応、会計リテラシーの向上、イレギュラーな事象発生時の原因分析と再発防止策の検討などが課題として挙げられています。

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