株式会社アウトソーシングは、2023年6月、子会社である株式会社アウトソーシングテクノロジーにおいて、雇用調整助成金申請と取引プロセスの問題に関する内部通報を受けました。
社内調査の結果、一部の雇用調整助成金の申請手続きが不適切であったことが判明し、東京労働局に報告されました。また、一部の取引先との取引プロセスにおいても、社内決裁プロセスが適切に行われていなかった疑いがあることが確認されました。
これらを受け、より透明で専門的な調査を行うため、2023年8月に外部調査委員会を設置し、事実関係の調査が行われました。
この記事では、同社が公表した外部調査委員会の調査報告書に記載されている不正の内容とその発生原因に焦点を当てて要約しています。
※詳細は株式会社アウトソーシング外部調査委員会「調査報告書」をご確認ください。なお、件外調査については割愛しております。
アウトソーシンググループの概要
株式会社アウトソーシング
- 資本金:252億4,473万円(2022年12月31日現在)
- 事業概要:国内技術系アウトソーシング事業、国内製造系アウトソーシング事業、国内サービス系アウトソーシング事業、海外技術系、事業海外製造系及びサービス系事業
株式会社アウトソーシングテクノロジー
- 資本金:4億8,365万円(2022年12月31日現在)
- 事業概要:国内技術系アウトソーシング事業、IT・機械・電子・電気・ソフトウェアの技術者派遣及び開発請負、職業紹介業務(専門職の職業紹介)
雇用調整助成金の制度の概要
雇用調整助成金(以下「雇調金」という)は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、労働者の雇用を維持するために休業等を実施する事業主に対して助成を行う制度です。
対象となるのは、休業等及び出向であり、原則として雇用保険の被保険者が対象です。2020年には新型コロナウイルス感染症の影響を受けて特例措置(コロナ特例)が設けられ、支給要件の緩和等がなされました。
休業については、以下の要件を満たす必要があります。
- 経済上の理由による事業活動の縮小
- 判定基礎期間(1か月)の休業延べ日数が、対象労働者に係る所定労働延べ日数の1/20(中小企業)または1/15(大企業)以上
- 休業手当の支払い
- 1日の休業時間が1時間以上
- 所定労働日の所定労働時間内の休業
教育訓練を実施した場合、訓練費として助成額が加算されます。対象となる教育訓練は、職業に関する知識、技能または技術を習得させ、または向上させることを目的とするものです。
助成額は、休業手当または教育訓練の際の賃金相当額に助成率を乗じた額に、教育訓練を実施した日数に応じた訓練費を加算した額となります。助成率は通常、中小企業は2/3、大企業は1/2ですが、コロナ特例下では最大10/10まで引き上げられました。
雇調金の支給申請には、休業等実施計画届や支給申請書などの書類提出が必要です。支給・不支給は管轄労働局長が決定します。
不正受給とは、偽りその他の不正行為により本来受けることのできない助成金の支給を受けたり、受けようとすることを指します。不正受給が認められた場合、支給した助成金の返還命令、返還額の2割に相当する額以下の納付命令、5年間の雇用関係助成金不支給などの措置が取られる可能性があります。
アウトソーシングテクノロジーにおける雇調金の不正受給の疑義
研修報告書の偽造行為
2020年7月末~8月、アウトソーシングテクノロジーは雇調金申請のために多数の研修報告書を偽造しました。これには、研修報告書の不足と、決算に計上した雇調金支給額を確保する必要があったことが背景にあります。
経営管理本部部長e氏を中心に偽造が指示・実行されていました。偽造方法には、手書きで一から作成する方法、エクセルファイルで一から作成する方法、他の報告書をコピーして修正する方法、PDFデータを加工して修正する方法がありました。
少なくとも4,798人日分の偽造が確認され、29の事業所に及びました。実際には研修を受講していない社員についても教育訓練加算を申請した事例もありました。
2020年9月以降も、規模は縮小したものの偽造は継続されました。ソリューションサービス事業本部(以下「SS事業本部」という)では、事務局が未提出の研修報告書を作成していました。R&D事業本部からの研修報告書にも、同一内容のものが確認されており、拠点で偽造が行われていた可能性は否定できません。
経営管理本部においても、2020年9月以降、研修報告書の偽造を行わない方針が立てられていましたが、SS事業本部による研修報告書の偽造を容認していた例が確認されています。また、2020年10月には、決算数字を意識して2020年8月と同様の対応をとるよう指示していた事実も認められました。
関係者の認識としては、経営管理本部の担当者らは研修報告書の偽造を認識していましたが、当時の代表取締役であったa氏は知らなかったと述べており、これに反する資料は確認されていません。
e氏らが偽造行為を行ってまで雇調金申請を行った背景には、以下の事情が認められました。
- 新型コロナウイルス感染症の影響で、雇調金の申請がアウトソーシングテクノロジーにとって重要な収益の1つとして位置づけられていたこと
- 2020年7月30日の臨時取締役会で、上半期決算に「助成金収入535,545千円」を計上することが承認されたこと
- e氏が入社して間もない時期であり、雇調金支給を確保すること、決算数字に齟齬を来さないようにすることが自身の役割であると強く感じていたこと
- アウトソーシングテクノロジーが意見を言いづらい、トップダウン型の組織であると感じていたこと
休業日数に関する不正
アウトソーシングテクノロジーは、実際には雇調金の申請対象となる休業ではない日を休業日とすることで、休業日数を増やし申請額を増加させたり、休業規模要件を満たすように調整していました。
また、体調不良による休業など、本来申請対象外の日を含めて申請するよう指示した事例もありました。
休業規模要件を満たすために、ある事業所に所属する社員の休業日数のみでは要件を満たすことが難しい場合、別の事業所所属の社員を事後的に異動させることも検討されていました。ただし、実際に事後的に所属を異動させた例は発見されていません。
助成金の不正受給への該当性及び影響額
前述の研修報告書の偽造は、申請書類として必要な「受講者本人が作成した研修報告書」の要件を満たさず、「偽りその他の不正行為」に該当すると認められます。また、研修を受講していない社員について教育訓練加算を申請したり、休業日数を偽って休業規模要件を満たすようにしていた行為も、不正受給に該当すると考えられます。
不正受給が認められる場合、少なくともその申請月以降に受給した雇調金の全額を返還しなければならないとされています。アウトソーシングテクノロジーの場合、これまでに受給した雇調金全額である35億921万9,774円が返還対象となる可能性があり、さらに、返還額の2割に相当する加算金および年3%の延滞金の支払いも必要となる可能性があります。
ただし、雇用保険法施行規則上は、雇調金の返還命令並びに加算金及び延滞金の支払いは都道府県労働局長の裁量によることとされています。そのため、最終的な不正受給の認定および返還額については、これまでに雇調金の支給決定を行った各労働局との協議を経て決定されることになります。
アウトソーシングにおける雇調金の不正受給の疑義
雇調金申請実績と休業指示の実施
アウトソーシングは外勤社員の「待機」状態に加え、2020年5月と6月に製造・サービス統括本部の内勤社員に対して休業指示を出し、雇調金を申請しました。専務取締役o氏の発案で、内勤社員の稼働低下を理由に実施されました。
労働組合との協議後、o氏は内勤社員に対して5月と6月で合計7日間の休業取得を指示しました。各社員は任意の7日間を休業日として選択しました。
内勤社員に関する休業実態
実際の休業実態を調査したところ、多くの内勤社員が休業日にも業務を行っていたことが判明しました。アンケート調査では、496名中99名が休業日にも休業できていなかった、または一部業務を行っていたと回答しました。147名の管理職のメール送信数調査では、134名が休業日に勤務日と大差ない件数のメールを送信していました。
ヒアリング調査では、複数の社員が新型コロナウイルス感染症の影響で業務が増え、休業できる状況ではなかったと述べています。一部の社員は休業日に通常勤務していたと証言しています。
不正受給への該当性
これらの事実から、アウトソーシングの内勤社員の休業に伴う雇調金申請は、休業の実態がないものであり、不正受給に該当する可能性が高いと考えられます。不正受給に該当する場合、2,631万9,877円の雇調金額の返還と、追加の支払いが必要となる可能性があります。
外勤社員の休業に係る雇調金申請について
一方、外勤社員の休業に係る雇調金申請(合計1億7,276万7,908円)については、申請上の休業日と実際の休業に若干の差異が確認されましたが、これは事務手続上の過誤と考えられ、不正受給の事実は認められませんでした。外勤社員の勤怠は派遣先でも管理されているため、アウトソーシング側で調整することは難しいと判断されました。
募集費に関する疑義
アウトソーシングテクノロジーの前代表取締役社長a氏が退任後も、実質的に関与する委託業者との不透明な取引が指摘されました。調査の結果、A社、B社、C社との取引に不透明な部分が確認され、精査対象となりました。さらに、I社、J社、K社も調査対象に加えられました。これらの委託業者は主に募集業務に関連しており、その他の採用関係支出も検証されることになりました。
a氏が代表取締役社長を辞任した経緯、並びにその後のアウトソーシング及びアウトソーシングテクノロジーとa氏の関係について
アウトソーシングは2021年12月28日に開示したとおり、アウトソーシングテクノロジーを含むアウトソーシンググループにおいては、過去に不適切な会計処理が発覚し、前回調査が実施されています。
a氏はこの外部調査委員会の調査結果を受けて、2022年1月17日付でアウトソーシングテクノロジーの代表取締役社長を辞任しましたが、辞任後もアウトソーシングテクノロジー及びアウトソーシングはa氏との関係を継続させました。両社は、a氏及び専務取締役o氏が代表取締役を務める会社とコンサルティング契約を締結していました。
これらの契約により、a氏は実質的にアウトソーシングテクノロジーの事業運営に深く関わり続け、また、各本部は、経営会議や取締役会の前に、a氏に議案や資料を送付し、意見を聴取していました。
2022年7月末に、社外取締役や会計監査人からの指摘を受けてコンサルティング契約は解消されましたが、b氏(アウトソーシング代表取締役会長兼社長)は、その後もa氏をアウトソーシングテクノロジーの事業運営に関与させようと試みました。
コンサルティング契約解消後も、a氏はアウトソーシングテクノロジーの取引先企業との間で顧問契約を締結し、役職員から定期的に報告を受け、助言を与えるなど、依然としてその事業運営に一定の影響力を有していました。
2023年4月には、アウトソーシングがa氏の会社とアドバイザリー契約を締結しようとしましたが、社外取締役及び会計監査人の強い反対により断念しました。
このように、a氏が代表取締役を辞任した後も、b氏を中心とするアウトソーシンググループの経営陣は、a氏を事業運営に関与させ続けようとしていました。これは、前回の不適切会計処理の問題を受けて策定された再発防止策の趣旨に反するものでした。
募集費に関する委託業者との取引プロセスについて
以下の手続きにより、アウトソーシングテクノロジーは募集費に関する委託業者との取引を管理・実行していました。
1.委託業者との取引開始手続き
- 「反社会的勢力対策規程」に基づく調査
- 「外注管理規程」に基づく登録
- 「募集費ガイドライン」による過去の不適切会計処理関与業者との取引禁止
2.社内決裁プロセス
- 職務権限一覧表に基づく決裁
- 支払金額と年度予算内外で決裁権者が異なる
- 実務上は職務権限一覧表と齟齬する運用が定着
3.稟議手続き
- 担当課の次長または課長が稟議書を起案
- 雇用戦略本部長、管理本部長の審査を経て社長決裁
- 基本的に発注前に稟議を行う
- 必要に応じて見積書等を添付
4.経理部門の役割
- 稟議決裁の確認は行うが、金額の適正性確認基準は未設定
- 稟議申請部署が金額の適正性を確認しているものと理解
5.支払い手続き
- 「経理規程」に基づき実施
- 請求書または取引を証する書類を添付した会計伝票で処理
- 経理部は役務提供の実態確認は行わず
A社、B社、C社、J社、K社、I社との取引について
前述の取引は主に、アウトソーシングテクノロジーの雇用戦略本部長v氏の主導で開始されました。各社との主な取引内容は以下のとおりです。
A社:2024年度新卒学生の採用業務委託
A社との取引は、v氏がA社関係者とa氏(アウトソーシングテクノロジーの元代表者)との会食を設定したことがきっかけでした。v氏は、A社が偏差値上位校の学生情報を多く有することを知り、2024年度新卒採用の追加母集団形成のためA社に募集業務を委託しました。契約は複数の稟議書に分割して起案されましたが、提供された役務の内容は必ずしも見積書や稟議書の内容と一致していませんでした。
B社:人材紹介サービスの利用
B社との取引は、B社の資金繰り悪化を背景に、a氏の仲介でアウトソーシングテクノロジー関係者との面談が設定されたことから始まりました。アウトソーシングテクノロジーはB社への出資等の判断のため、まずB社のサービスを利用して人材採用を行うこととしました。
C社:中途採用Webサイトの改修業務委託
C社への委託は、アウトソーシングテクノロジーの中途採用Webサイトのリニューアルのためでした。v氏はC社の実績を評価し、経営会議での報告を経て契約を締結しました。しかし、本調査時点でWebサイトの改修は完了しておらず、費用の半額が前払いされている状況でした。
J社:人材紹介サービスの利用(前払チケット方式)
J社との取引は、v氏がa氏からJ社の紹介を受けて開始されました。前払チケット方式で人材紹介を受けており、チケットは全て消化されています。ただし、残高証明書の作成過程に不適切な点がありました。
K社:新卒採用支援業務委託と求人情報掲載業務
K社との取引は、新卒採用支援業務と求人情報掲載業務に関するものでした。v氏の主導で、アウトソーシングテクノロジーだけでなく子会社の求人情報も掲載することで、より大きな母集団形成を目指しました。
I社:広告掲載約款に基づく取引
I社との取引は、前回の不適切会計処理に関与したZ社との取引を継続できなくなったことを背景に始まりました。Z社の担当者がI社に移籍することで、実質的にZ社との取引を継続する形となりました。
問題点
調査の結果、これらの取引について、役務提供の実体がない、あるいは請求金額が水増しされていたという事実は確認されませんでした。また、アウトソーシングテクノロジーがこれらの会社を通じて支払った報酬の一部をa氏に還流させる目的で取引が実行されたとも認定できませんでした。
しかし、以下のような問題点が指摘されています。
取引開始の経緯
多くの取引が、a氏との関係性を持つ会社との間で行われており、v氏はその関係性を理解しながら、必要性や金額の合理性を十分に検討せずに取引を開始しました。例えば、A社、B社、K社との取引では、各社がa氏が代表を務める会社と顧問契約を結んでいることをv氏が認識していました。
稟議手続の不備
A社との取引では、稟議書の内容と実際の役務内容に大きな乖離がありました。v氏自身が稟議内容の正確性を重視せず、担当者も稟議書の内容をv氏の指示通りに作成するにとどまっていました。
再発防止策との矛盾
I社との取引は、前回の不適切会計処理後に策定された再発防止策(不適切な会計処理に関与した取引先との契約終了)の趣旨に反するものでした。v氏やエキスパート採用部長ai氏が管理部門等に相談することなく、実質的に前の取引先と同様のサービスを受けることを企図して取引を開始したことは、再発防止策を潜脱するに等しい行為でした。
法的要件の確認不足
K社は有料職業紹介業の許認可を有していませんでしたが、アウトソーシングテクノロジーはこれを事前に確認せずに取引を行いました。許認可の有無は取引に当たって最も重要な事項であり、少なくとも人材紹介取引を開始するに当たっては事前に確認すべきでした。
不適切な残高確認手続
J社との取引では、アウトソーシングテクノロジーの社員が作成した一覧表がそのままJ社の残高証明書として転用されるという不適切な手続きが行われていました。
業務履行の遅延
C社との取引では、Webサイト改修業務が本調査時点で完了していませんでした。
これらの問題の背景には、v氏をはじめとするアウトソーシングテクノロジー関係者が、a氏との関係性を持つ会社を安易に起用したこと、再発防止策の趣旨が十分に浸透していなかったこと、内部統制やコンプライアンス意識が不十分だったことなどが挙げられます。
結論として、これらの取引自体に直接的な不正は認められませんでしたが、取引開始の経緯や手続きには多くの不適切な点があったと指摘されています。特に、a氏が代表取締役を辞任した後も、その影響力が取引先選定に及んでいた可能性は否定できません。
また、再発防止策が形骸化していた点も問題視されており、アウトソーシングテクノロジー全体としてコンプライアンス意識の向上と内部統制の強化が必要であると指摘されています。
社外取締役の対応
社外取締役は、a氏及び専務取締役o氏とアウトソーシンググループとの間のコンサルティング契約締結に際し、強い懸念と反対の意を示しました。具体的には、両氏がグループの経営に引き続き影響力を及ぼすことについて、書面で以下の懸念を表明しています。
- 契約は業務の引継ぎを目的と説明されていたにも関わらず、実際には実質無期限の契約を想定している
- 両氏は常勤で経営指導を行っており、今後も重要な施策や取り組みに関与するとされているため、経営陣の業務執行に大きな影響力を及ぼすことになる
- 取締役会決議に基づく業務の適正を確保するための体制に違反している可能性があり、二重ガバナンス体制は容認できない
- 公表された再発防止策に反するものであり、株主やステークホルダーからの当社への信頼を損なうものである
これらの指摘を受け、a氏及びo氏とアウトソーシング及びアウトソーシングテクノロジーとの間のコンサルティング契約は解消されました。
原因分析
雇調金の不正受給に関する疑義
調査の結果、アウトソーシングテクノロジー、アウトソーシング、および複数の子会社において、雇調金の不正受給に該当する可能性が高い状況が認められました。各社の不正の態様は様々でしたが、以下の共通する問題点が指摘されています。
コンプライアンス意識の欠如
各社の雇調金申請担当者の間で、「労働局から指摘を受けなければ(ばれなければ)問題ない」という考えが共通して存在していました。これは、コンプライアンス意識の欠如が組織的な問題であったことを示しています。
牽制の不在
アウトソーシングテクノロジーでは、本来牽制機能を果たすべき経営管理本部が自ら不正を実行していました。これは、組織のリスク管理・統制活動が適切に機能していなかったことを意味します。また、子会社における不適切な雇調金申請に対しても、経営管理本部は牽制機能を果たしていませんでした。
牽制の不在を招いた組織風土
アウトソーシングテクノロジーは、経営トップのイニシアチブが過度に強い状態にあり、経営会議などでも参加者が自らの意見表明を行うことが憚られる状況でした。これは、上場企業として備えるべき、牽制機能を尊重し、それに耳を傾けるという風土を欠いていたことを示しています。
利益獲得に向けたプレッシャー
新型コロナウイルス感染症の影響下で、雇調金による利益確保と派遣社員の雇用維持へのプレッシャーが強く存在していました。これが、不適切な雇調金申請につながった一因と考えられます。
現場の状況を顧みない獲得目標
アウトソーシングでは、内勤社員の実際の業務状況を把握しないまま一律の休業指示を出すなど、現場の状況を考慮せずに雇調金申請を行おうとしていました。
これらの問題点は、アウトソーシンググループ全体のガバナンスとコンプライアンス体制の不備を示しています。
募集費に関する疑義
募集費に関する不正行為の疑義に関しては、役務提供の実体がない、あるいは請求金額が水増しされていたという事実までは確認されませんでした。しかし、前回調査の結果を受けてアウトソーシンググループが策定した再発防止策が形骸化している状況が確認されました。主な問題点は以下のとおりです。
a氏によるアウトソーシングテクノロジーの事業運営への関与
a氏は代表取締役を辞任した後も、コンサルティング契約等を通じてアウトソーシングテクノロジーの事業運営に影響力を及ぼし続けていました。b氏(アウトソーシング代表取締役会長兼社長)が、a氏をアウトソーシングテクノロジーの事業運営に関与させ続けようとしたことが、再発防止策を形骸化させる要因となりました。
取締役会の軽視
a氏との契約締結について、取締役会への事前報告や審議が行われていませんでした。これは、取締役会による監督機能の強化という再発防止策が十分に実行されていなかったことを示しています。
管理部門の脆弱さ
アウトソーシングの経営管理本部が、b氏の強い意向に対して適切な牽制機能を果たせていませんでした。
稟議手続の形骸化
募集費に関する稟議書の内容と実際の取引内容が一致しないケースが複数確認されました。これは、会社として意思決定を行う際の統制に不備があったことを示しています。
取引先見直しの形骸化
前回の不適切会計処理に関与した取引先との契約を終了するという再発防止策が、十分に徹底されていませんでした。
a氏が事業運営に関与し続けたことの影響
a氏と関係のある取引先との取引が継続されました。v氏(雇用戦略本部長)は、a氏との関係性を理解しながら、取引の必要性や金額の合理性を十分に検討せずに取引を開始しました。
これらの問題点は、アウトソーシンググループの経営陣、特にb氏が、前回の会計不適切事案の問題点と上場企業としての在り方について十分な振り返りを行っておらず、再発防止に向けた決意を持てていなかったことを示しています。