【イメージワン】公務員への不正な金品供与と経営者の関与

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第三者委員会等調査報告書の要約

 2023年9月、株式会社イメージワンの代表取締役a氏および取締役b氏が新規事業参入に際して第三者へ不正に金品を供与した疑いがあるとの内部通報を受け、特別調査委員会を設置することになり、続いて独立した第三者委員会を設立し、専門的に調査を行うこととしました。

 さらに、11月には、イメージワンが関与する再生バッテリーのリユースレンタル事業に関する新たな疑惑が税務調査により浮上しました。この事実に基づき、同委員会による調査対象にこの追加疑惑も含めることになりました。

 これらの調査の過程で、主にa氏が関わる他の不適切とみられる数々の行為についても調査対象として挙げられ、調査が実施されました。

 この記事では、同社が公表した第三者委員会の調査報告書に記載されている主な不正案件の内容とその発生原因に焦点を当てて要約しています。

※詳細は株式会社イメージワン第三者委員会「調査報告書」(PDF)をご確認ください。

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イメージワンの概要

会社概要

  • 設立:1984年
  • 資本金:2,777百万円
  • 決算日:9月末
  • 従業員数:単体48名(2022年9月30日現在)
  • コーポレートガバナンス体制:取締役会および監査等委員会を中心としたコーポレート・ガバナンス体制となっており、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会、内部監査委員会を設置している

事業概要

 事業領域として、主にヘルスケアソリューション事業と地球環境ソリューション事業があります。

  • ヘルスケアソリューション事業:セグメント売上高(2022/9期)2,765,412千円
  • 地球環境ソリューション事業:セグメント売上高(2022/9期)666,199千円

当初の不正疑惑に関する調査

第三者へ不正に金品を供与した不正疑惑の概要

 内部通報で発覚した新規事業参入の際の第三者への不正な金品供与疑惑の概要は以下のとおりです。

①三重県松坂地区の消防本部勤務者m氏への不適切な金銭交付

 元代表取締役a氏が2022年3月26日にm氏と知り合い、彼から職務上の情報を得る代わりに金銭を提供していた事実が明らかになりました。この行動はa氏個人のものであり、他の取締役の関与は認められませんでした。

②社内調査報告書の共有回避の事実の有無

 m氏への金銭提供に関する内容が記載された調査報告書をb氏(同社元取締役)とd氏(同社元取締役)が確認したにも関わらず、これを取締役会に上程しなかったため、不適切な交付が発覚するのが遅れたとされます。

③その他

 さらに、m氏が当社のコールセンター業務受託入札に不当に関与した疑い、訪問看護事業をm氏に一任した結果、彼の逮捕により事業が頓挫し損害が発生したことなど、他にも複数の問題が認められました。

①三重県松坂地区の消防本部勤務者m氏への不適切な金銭交付

 元代表取締役a氏のm氏への不適切な金銭交付には、主に2つの事例があります。

 1つ目は、2022年5月2日にa氏が実質的に支配するA社を通じて、m氏に5,000,000円を交付したものです。a氏は、この金銭交付の理由について、m氏から執拗に要求されたこと、m氏がB社のn氏と20年来の付き合いがあること、m氏が様々な知識を提供してくれることなどを挙げています。ただし、m氏が公務員であるかどうかは特に重視していなかったと述べています。

 2つ目は、2022年6月30日から同年7月4日にかけて、a氏がm氏に5,500,000円を振り込んだものです。この理由について、a氏はm氏の娘婿が博打で同僚から借りた金を返済する必要があると言われたためだと説明しています。

 これらの金銭交付と関連して、a氏はm氏から主に医療用バス事業や健康医療相談コールセンター事業に関する情報提供を受けていました。m氏は、a氏に対してダイヤル24の仕様書等の資料を交付したり、コールセンター事業に関する具体的な情報を提供したりしていました。

 また、m氏はa氏に対してアルコール検知器の入札に関する情報も提供しています。2022年4月23日には、m氏が松坂市のアルコール検知器の入札に関する予定価格を「闇で送る」と伝え、翌24日には「内密資料」として2022年のアルコール検知器の予算額と思しき添付ファイルをa氏に提供しています。

 これらの行為について、m氏は当時公務員であり、職務上知り得た情報を提供していた可能性が高いことから、a氏の金銭交付が贈賄罪に該当する可能性があります。ただし、m氏側の賄賂性の認識が不明であるため、直ちに贈賄罪が成立するとは断定できません。

 しかし、たとえ犯罪に該当しないとしても、公務員に多額の金銭を交付すること自体、賄賂を疑われても仕方がない行為です。このような行動はイメージワンの信用性を著しく棄損させ得るものであり、上場会社の代表取締役としての意識、行動としては著しく不適切であると言わざるを得ません。

 結論として、a氏の行為は当社の取締役としての善管注意義務に違反する可能性が高いと評価されます。

②社内調査報告書の共有回避

 2023年2月14日、訪問看護事業の準備を進めていたm氏が詐欺罪の容疑で逮捕され、翌日に報道されました。これを受け、元取締役b氏は元代表取締役a氏も何らかの犯罪行為に関与している可能性を懸念し、t弁護士に社内調査を依頼しました。

 t弁護士は調査を行い、2023年5月17日付で社内調査報告書を作成しました。この報告書には、m氏による詐欺行為、a氏とm氏との金銭のやりとり、a氏への刑事及び民事上の責任追及の可能性、イメージワンの社会的評価低下の可能性などが記載されていました。さらに、a氏に取締役としての善管注意義務違反、忠実義務違反があり、辞任が望ましいとの意見も含まれていました。

 b氏は2023年5月11日にこの報告書のドラフトを受け取りましたが、取締役会で報告することはせず、他の取締役・監査等委員にも報告しませんでした。元取締役d氏も報告書の内容を認識していましたが、同様に取締役会での報告や他の取締役・監査等委員への報告を行いませんでした。

 b氏は報告書を上程しなかった理由として、内容に理解できない部分が多かったこと、最終版ではなくドラフト段階だったこと、騒ぎにならないように慎重に進めるよう指示したことなどを挙げています。

 一方、執行役員q氏やd氏、管理部・経営企画グループ所属従業員u氏、元B社従業員p氏の証言によれば、b氏は当初、報告書を共有してa氏を退任させる意向を示していましたが、内容を確認した後に態度を急変させ、「このような報告書は出せない」と言い出したとのことです。

 これらの行為について、b氏とd氏の善管注意義務違反の可能性が指摘されています。他の取締役の関与は認められませんでしたが、取締役監査等委員のi氏に対しては、b氏が調査報告書の作成を依頼していることを伝えた可能性があります。ただし、i氏にa氏の不適切な行為を把握できる情報が提供されたとは認められません。

③同社のコールセンター業務受託入札へのm氏の不当関与の疑い

 イメージワンは2022年7月1日にヘルスケアソリューション事業部内にコールセンターグループを設置し、s氏やC社の代表取締役r氏が所属して入札関連情報の収集や準備を行っていました。

 m氏はイメージワンのコールセンター事業準備段階からアドバイスを提供していました。s氏の証言によると、m氏はイメージワンの過去の実績を入札申込の実績欄に記載するよう助言するなど、具体的な指示を行っていました。

 また、r氏からs氏に「重要資料だから誰にも漏らさないように」と前置きして入札関連資料が渡されていました。これらの資料はm氏から提供された可能性が高いと考えられます。

 2023年1月、s氏は三重県某市の「救急・健康相談ダイヤル」の業務委託入札参加の稟議書を起案し、a氏の決裁を得て郵送しました。s氏によると、入札金額はa氏とm氏から指示された金額を記載したとのことです。

 しかし、この入札申込書は申込期限が過ぎていたため受け付けられず、イメージワンに返送されました。s氏は後にこの申込書を破棄したと述べており、m氏の影響の大きさがうかがえます。

 この行為に関して、公契約関係競売等妨害罪や官製談合防止法違反の可能性が検討されましたが、m氏がイメージワンに予定価格を伝えたことや、m氏から提供された情報が重要な情報であったことまでは確認できず、イメージワンにこれらの罪が成立する事実は認められませんでした。

 ただし、公務員との強い繋がりの中で入札を申し込むことは、不当な情報を得て入札準備を進めていたと見られても仕方がない行為であり、イメージワンの信用性を著しく棄損させる可能性があります。イメージワンが公務員であるm氏から同人が知り得る情報の提供を受けながら入札手続を進めようとしていたことは、上場会社としてのコンプライアンス意識や業務体制として大いに問題があると指摘せざるを得ません。

④訪問看護事業におけるm氏の不当な関与

 訪問看護事業は当初、イメージワンと一般社団法人Eの共同出資による子会社設立を想定していましたが、Eとの業務提携は頓挫しました。一方、a氏とm氏の間で2022年8月頃から訪問看護事業に向けた話が進められ、m氏に事業準備が一任されていました。

 2022年11月頃、イメージワンはワン・サイエンス社で訪問看護事業を行うことを決定し、定款変更を行いました。その後、m氏を中心に事務所備品関係、保健所申請、内装工事、職員の処遇等の準備が進められました。

 2023年2月14日、m氏が詐欺罪の容疑で逮捕されました。a氏はこの事態を受けて看護師を集め、コンプライアンスの問題上m氏との関係を持てないことを伝えました。その後、2023年3月28日、ワン・サイエンス社はm氏の起訴によりコンプライアンス上の理由で訪問看護事業を中断せざるを得ないこと、内定取消と補償金の支払いを看護師たちに提示しました。

 また、m氏は看護師数名から投資と称して多額の金銭を預かっていたことが判明しました。

 この事態に関して、訪問看護事業をm氏に一任し、適切な監督を行わなかったa氏の責任は重いと言わざるを得ません。また、事業を中断したことで、採用予定だった看護師から損害賠償請求を受ける可能性があること、m氏の詐欺行為によって看護師が損害を被った場合、ワン・サイエンス社に使用者責任が生じる可能性があります。

ニトリルグローブ取引に関する問題

 2022年2月から2023年1月にかけて、イメージワンはF社製のニトリルグローブをC社経由で仕入れ、病院等のエンドユーザーに販売していました。販売経路は、イメージワンから直接販売するルート、H社経由で販売するルート、H社とA社を経由して販売するルートの3つがありました。

 商品の流れとしては、仕入れはF社からイメージワンへ直接納品、販売時もエンドユーザーへ直接発送されるため、C社、H社、A社との間は金銭のやり取りのみでした。

 2022年12月頃、F社の製造コスト増加のため、従来品よりもニトリルの量を減らして厚さを薄くした廉価版の製造をF社に依頼し、仕入れルートをC社経由からF社からの直接仕入れに変更した上で、販売を開始しました。

 この取引には、以下の問題点が指摘されています。

①a氏と関係性がある会社が商流に介在していること

  • 元代表取締役a氏が実質的に支配可能なA社が、H社を通して販売ルートに入っていた。これは利益相反取引のおそれがあり、会社法上の問題となる可能性がある。
  • 当初仕入れの商流にC社が介在していたが、a氏とC社の関係性は不明瞭。a氏とC社に強い関係性がある場合、取引から外された際に抵抗があったはずであり、不自然な点が残る。

②正規品と廉価版の商品管理の不備

  • JANコードが異なる正規品と廉価版を同一商品として扱っていた。
  • 在庫管理システム上、J社倉庫に納品された商品を、イメージワンが実際に確認することなく、仕入日順に出荷したと処理していた。

 これらの問題点から、イメージワンは医療品の管理体制、利益相反取引に関する認識、在庫管理方法など、ガバナンス体制において改善すべき点が多いと指摘されています。

空気清浄機の在庫買取に関する問題

 イメージワンは、韓国で製造され、K社が輸入販売する光触媒付き空気清浄機(以下「本空気清浄機」という。)の仕入販売を行っていました。

 元代表取締役a氏がイメージワンの代表取締役に就任する前から本空気清浄機を取り扱っていましたが、売上は伸び悩んでいました。a氏が代表取締役を務めていたB社も本空気清浄機を取り扱っており、a氏の就任と同時に、B社で本空気清浄機事業を担当していたz氏もイメージワンに移籍し、本格的に本空気清浄機の取扱いを開始しました。

 z氏の移籍後も販売は伸びず、2022年8月、在庫を抱えていたB社から206台を買い取る形となりました。この取引には、以下の問題点が指摘されています。

①購入相手先を偽装していること

 当初、イメージワンは、B社から本空気清浄機を買い取ったことを隠すため、C社から購入したように偽装していました。これは、a氏がB社のかつての代表取締役であり、B社とa氏との関係を隠蔽する意図があったと推測されます。

②本空気清浄機を購入する合理的な理由がないこと

 z氏がイメージワンに移籍した時点で、B社の本空気清浄機事業をイメージワンに移管する意図があったと推測されます。そうであれば、B社の在庫である本空気清浄機206台も、当初からイメージワンが引き取るべきものでした。

 しかし、a氏は在庫をC社に一旦引き取らせ、その後イメージワンが買い取るという不自然な手順を踏んでいます。これは、a氏がB社とC社の双方と関係を持ち、意図的に複雑な取引を行っていた可能性を示唆しています。

 これらの問題点から、イメージワンは、a氏と関係のある会社との取引において、透明性や合理性を欠いた行動をとっていたと判断できます。

新型コロナウイルス抗原検査用試薬取引の前渡金に関する問題

 2022年12月5日、a氏はy氏(サプライグループ所属従業員)に対し、N社への9,900万円の前渡金を指示する請求書を手渡し、y氏は稟議書を作成、元取締役d氏とa氏が決裁し、同日支払いが行われました。

 この請求書には、PCR検査用試薬1万個を、1個あたり単価31円の検査キット31万個分に相当する9,900万円で購入する旨が記載されていました。しかしながら、この取引は実際には行われず、2023年1月30日に全額が返金されました。

 この問題に関して、取締役d氏とa氏の間で、前渡金の目的について食い違う主張がなされています。

  • d氏の主張:a氏から、元取締役b氏への未払い役員報酬の支払いのために、一時的に資金を貸付けてほしいと頼まれた
  • a氏の主張:N社との取引は実際に試薬を購入するためのものであり、b氏への資金貸付という事実は全くない

 第三者委員会の調査では、N社への請求書の記載内容に不自然な点が見られる一方で、d氏とa氏のどちらの主張も裏付ける客観的な資料は得られませんでした。

 最終的に前渡金は全額が返金されており、イメージワンに損害は発生していません。しかしながら、取締役間で主張が食い違っていること、また、その真偽を明確に立証できなかったことから、第三者委員会は、本件N社請求書に基づく支払いに何らかの問題が存在する可能性を指摘しています。

太陽光調査費用に関する問題

 2022年12月2日付けの請求書に基づき、a氏は、ac氏(ESGグループ所属従業員)に命じて、 某合同会社の代表社員であるab氏に太陽光発電所の調査費用として220万円を支払わせています。

 しかしながら、a氏が主張する調査目的や内容を裏付ける資料は一切存在せず、調査の実在性自体に疑義が生じています。a氏は、取引先から太陽光発電所の買収案件の話を持ちかけられ、調査をab氏に依頼したと説明しています。

 しかしながら、ab氏から提出された見積書や報告書、 または、本件太陽光発電所に関する資料等は一切確認できませんでした。

 また、仮に調査が実在したとしても、a氏とab氏との関係性から、 契約自体が妥当性を欠いている可能性が指摘されています。ab氏は、a氏の妻の知人が経営する会社の従業員であり、a氏自身もab氏とゴルフに行くなど、個人的な親交があったことを認めています。

 上場会社の役員が、その立場を利用して、 知人との間で不必要な契約を締結し、会社に損害を与えた場合には、善管注意義務違反、忠実義務違反に問われる可能性があります。

貸株に関する問題

 元代表取締役a氏は、2023年6月頃、知人であるad氏から、ad氏が保有する株式会社O社の株式を貸してほしいとの依頼を受け、ac氏(ESGグループ所属従業員)に依頼して、ac氏に当該株式の貸株契約を締結させています。

 a氏は、ad氏から、資金繰りのために株式を担保に入れて資金調達をする必要があり、そのための仮装取引として貸株契約を締結したいと相談され、ad氏との付き合いもあり、ac氏に貸株契約を締結させた、と説明しています。

 しかしながら、上場会社の役員又は同人が支配する法人が、当該上場会社の株式の売買等に関与することは、インサイダー取引規制の観点から慎重になされるべきであり、a氏は、ad氏の要請を受け、安易に本件貸株契約を締結したことは軽率であると指摘されています。

 また、a氏は、貸株契約の結果、O社の株式が市場内外で自由に売却される状況になるということさえも理解していなかったことから、上場会社の役員として当然備えておくべき法的知識を欠いていたと指摘されています。

追加調査された再生EVバッテリーを用いた蓄電池事業に関する取引

 この調査は、再生EVバッテリーを事業用ポータルバッテリーとしてリユースレンタルする環境配慮型の事業(本蓄電池取引)に関するものです。

 本蓄電池取引は、2021年11月から開始され、バッテリーモジュールが組み込まれた実機を最終利用者にレンタルすることを目的として投資家がバッテリーモジュールを購入し、イメージワンおよび一定のステークホルダーを介在させて最終利用者へ転貸するスキームです。

 取引の商流には、譲渡契約のスキームとレンタル契約のスキーム(組合方式と直レンタル方式)があります。投資家のリターンは、少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度による即時償却からの節税効果、レンタル料収入、バッテリーモジュール売却による収入です。

 2023年3月から4月にかけて、税務署による税務調査が行われ、バッテリーモジュールの実在性に疑義が生じました。これを受けて第三者委員会の調査が行われ、以下の項目が判明しました。

  • P社は全取引159,326台分の取引情報を開示せず、一部の管理表のみを提示した
  • 管理表に記載された最終利用者の多くが取引の実績はないと回答した
  • 協力会社は転貸実績を主張したが、客観的な裏付けは得られなかった
  • 千葉倉庫での実査では約8,000台のバッテリーモジュールを確認したが、本蓄電池取引との紐付けは不可能だった
  • P社の商品元帳に不自然な点があった
  • シリアル番号に重複があるなど、管理に不備があった

 これらの調査結果から、第三者委員会は本蓄電池取引(バッテリーモジュール合計159,326台)の多くは、バッテリーモジュールの実物がなく、また最終利用者との契約(またはその予定)もない状態で行われた可能性が高いと結論付けました。

 この問題に関して、イメージワンや関連会社(B社、A社)は、取引の実在性を認識していなかった可能性が高いとされています。しかし、投資家への勧誘に際して、実際にはバッテリーモジュールが存在しないか、少なくとも最終利用者が決まっていない状態で取引を進めたことは、不法行為責任等が生じる可能性があるとされています。

 役員の責任については、a氏、b氏、d氏それぞれに善管注意義務違反の可能性が指摘されています。特にa氏は、イメージワンにおける本蓄電池取引の主導的立場にあり、取引の実在性に疑義があったにもかかわらず、投資家への勧誘を続けたことが問題視されています。

 また、会計処理に関して、本蓄電池取引は収益を認識する根拠に乏しいため、会計処理の取消しを行うべきであると考えられます。

原因分析

 イメージワンの不正が発生した要因について、第三者委員会調査報告書は複数の点を指摘しています。以下にその要点をまとめます。

経営陣のコンプライアンス意識の欠如

 代表取締役であったa氏が、とにかく会社の売上を増やすことに躍起になっており、その過程でコンプライアンス意識が二の次になっていたことが指摘されています。また、従業員もa氏からの指示に対する忖度から、不適切な取引の稟議書を起案するなど、適法性や妥当性のチェックが不十分になっていたとされています。

決裁権限の過大集中

 a氏は1億円未満の取引に対する決裁権限を持っており、これが適切なチェックやバランスを欠いた状態を生じさせていたと指摘されています。

社内の不透明な業務運営

 経営会議での議事が記録されていなかったため、客観的に事業のリスクを管理・分析することが困難であったとされています。これが、適切なリスクの把握を妨げ、結果的に問題の発生に繋がったと評価されています。

取締役間の監視機能不全

 取締役間での情報共有が適時に行われず、取締役の相互監視機能が十分に機能していなかったことも、問題発生の一因とされています。特に、取締役として選ばれた人物に適切な監査機能を発揮できるかどうかの疑問が指摘されています。

事業の属人化と透明性の欠如

 特定の事業が属人的に行われ、その内容が「ブラックボックス」となっていたことから、事業が適切に行われているかについての外部からのチェックが困難であったことも問題の一因とされています。

不正のトライアングル

 第三者委員会調査報告書に基づいて、元代表取締役a氏の不正行為が発生した要因を「不正のトライアングル理論」に沿ってまとめます。この理論は不正行為の発生を動機・プレッシャー、機会、正当化の三つの要素で説明します。

動機・プレッシャー

 a氏が不正行為に及んだ主な動機としては、売上の増加という強いプレッシャーがありました。a氏は会社の売上向上に躍起になり、コンプライアンスを疎かにしていました。さらに、自身が管理する他の企業を通じて、取引先から不正に金銭を受け取ることで個人的な利益を追求していたと考えられます。このように、高い業績目標と個人的な利益追求の両方が、不正行為への動機を形成していたとされます。

機会

 a氏には、1億円未満の取引に対する単独決裁権があり、これが不正行為の機会を提供していました。このような過大な権限は、十分な監視やチェックの欠如を意味し、a氏が個人的な裁量で不適切な金銭交付を行う窓口となりました。また、組織内での情報共有の不足や、経営会議の議事録が不適切に管理されていたことも、不正行為を容易にしたと指摘されています。

正当化

 a氏は、自己の行動を正当化するために、m氏からの情報提供が新規事業に必須であるとの認識を持っていました。これにより、不適切な金銭交付も事業の成功のためには仕方ないと自己正当化していたと考えられます。さらに、社内での役割と影響力を利用して、不正行為を正当化する文化が形成されていた可能性があります。経営層の強い指示に従う企業文化が、不正行為を正常化する一因となっていたと報告されています。

取締役会と監査等委員会の対応と問題点

 金融庁が公表している内部統制基準では、内部統制には限界があり、経営者が不当な目的の為に内部統制を無視または無効ならしめることがある、としています。

 そのため、取締役会および監査役等が経営者の行動に抑止的効果をもたらすことが期待されていますが、第三者委員会の報告書からは、取締役会や監査等委員会の機能不全を示唆する記述が見られます。

取締役会への報告の不足

 元取締役b氏は、元代表取締役a氏に関する調査報告書(t弁護士が作成した社内調査報告書)の内容を把握していながら、取締役会に報告していませんでした。取締役会は、会社経営の重要な決定機関であるため、重大な情報が適切に共有されなかったことは問題です。

取締役間の情報共有不足

 本件追加疑惑(再生バッテリー取引に関する問題)において、税務調査が行われていたにもかかわらず、取締役間で十分な情報共有がなされていませんでした。重要な経営上のリスクに関する情報共有が不足していたことは、取締役会全体の責任として問題視されています。

監査等委員会の監視機能の不全

 a氏の会社であるB社の従業員が、イメージワンの取締役監査等委員に選任されているなど、監査等委員会の独立性や客観性に疑問符が付く状態でした。また、監査等委員会は、内部監査や会計監査の結果を適切に監督できていなかった可能性も示唆されています。

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